BMWとの共同開発でもトヨタらしさを存分に表現! 新型トヨタ・スープラのメカニズムに迫る (1/4ページ)

目指したのは軽量な後輪駆動のスポーツカー

 トヨタ自動車とBMWグループが、「燃料電池(FC)システムの共同開発」「スポーツカーの共同開発」「軽量化技術の共同研究開発」に関する正式契約を締結したのは2013年1月24日のことだった。ここで言う「スポーツカーの共同開発」が、新型スープラにつながったのは言うまでもない。

 しかし、この日からプロジェクトが動き出したわけではない。正式契約の前段階として2012年6月には覚書の締結がなされている。このタイミングからスープラの開発はスタートしている。

 プロジェクトの最初期段階から関わってきたのは、ボディ設計のスペシャリストである石川良一さん。『ボデーエキスパート』として設計図のチェックを始めたのは、覚書を締結した直後だったという。

「多田らが求めるスポーツカーとして必要な要素などを知ったうえで、初期の作図データをチェックしたのが、最初の関わりになります。自分自身の経験としてアルテッツァなどFRスポーツ系のボディ設計やLFAのカーボンボディの設計、レクサスF系などの担当をしてきました。そうした経験を生かして、『軽量な後輪駆動のスポーツカー』という開発チームの意向を受けて、狙っているパフォーマンスが実現できるボディであるかどうかを図面の段階から確認するのが役割です」と石川さん。

 ニュルブルクリンク24時間レースに参戦するマシンのエンジニアも務めている石川さんに、さらに具体的な印象について聞いてみよう。

「最初の図面は、骨格が直線的に通っているボディを示していました。低く、強いボディを目指しているという意図は十分に感じました。その図面をお見せすることはできないのですが、例えるならホンダS2000のハイXボーンフレームのように高い位置に真っ直ぐにズドンと骨格があると言えば伝わるでしょうか。センタートンネルが強いフロアというイメージです。いずれにしても、強いボディを目指したことが伝わってくるものでした」

 この段階で懸念となる部分はなかったのだろうか。単純に考えても強いボディと軽いボディを両立することは難しい。

「ボディ剛性に影響を与えない軽量化の手法として、フタモノ(ドアなどの外板部品)のアルミ化や、バックドアまたフロントフェンダーなどをCFRPにすることなどは提案しました。それは、低重心化をさらに進めるには必要な手段だと考えたからです。もちろんアイディアを出すだけではわれわれの仕事としては成立しません。もしカーボンボディにするとなっても、その図面をチェックできることが求められます。しかし、すでにLFAの設計でフルカーボンボディを経験していました。カーボンでフタモノを量産するにあたって、チェックできるだけのノウハウを有していたから提案できたのです」

 では、新型スープラのボディに手応えを覚えたのはいつ頃だったのだろうか。

「その後、設計が進んだ段階、試作車ができる前です。同じようなクーペボディということで、スープラとレクサスRCやLCと設計値を比べてみるとボディ断面の強さではレクサスが優勢でしたが、ねじり剛性ではスープラが高い数値を示していました。つまり上物(ボディ)は軽く、フロアで強さを出しているということです。上物を軽くするということは重心を低くすることにつながりますから、当初の狙い通りに仕上がっていると手応えを感じました」と石川さんは振り返る。


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