いまだ大人気のスズキ・ジムニーの実力は本物か? レーシングドライバーが徹底的に斬る! (2/2ページ)

ジムニーにシエラのエンジンとオーバーフェンダー装着で完璧!?

 それを除けば室内は快適で音も静か。ただ大柄に見える車体も室内はさほど広くなく、とくに後席は足もともシートもミニマム。後席シートは中央に寄せられて設置され、左右2分割可倒式だが両サイドにホイールハウスによる大きな隙間がありシートの座面もフラットで座り心地は最悪だった。そこだけを見れば20年以上昔の基本設計のまま、2017年まで販売されていた三菱のパジェロ・ミニと同じレベルで、車体のほかの部分が良くできているだけに残念に感じられるのだった。

 ハンドリングもまた問題点が露呈した。スズキ車としては珍しくフロントサスペンションにスタビライザーを備えるが、大きなルーフとボンネットにより重心が高く高速旋回は得意ではない。ロールは抑えていても内輪の接地圧が減少し、アンダーステアが徐々に強まりコーナー外側にはらんでしまうのはいただけない。

 より大径タイヤでトレッドも広がる普通車のジムニー・シエラならコーナリングも安定しているのではと期待して試してみたが、タイヤサイズ拡大と拡幅の手法が適切でなく、路面アンジュレーションや轍にステアリングが影響を受けるワンダリングが起こりやすく、バネ下重量も増加したことで乗り心地も悪化。シャシーのバランスは軽のジムニーのほうが勝っていた。

 結果、外観的にはオーバーフェンダーを備えるジムニー・シエラがカッコいいが、シャシーバランスはジムニーが上。動力性能は1.5リッターエンジン搭載のジムニー・シエラが上と、どうにも決めようがない事態となってしまった。ジムニーでシエラのオーバーフェンダーを装着したら良さそうだが、最大幅を超えないよう工夫しなければならないだろう。

 市場においてもノーマルのまま乗るのではなく、さまざまなモデファイを行ってジムニーを楽しむユーザーが増えていて、新しいアフターマーケットとして世界中でムーブメントを巻き起こしているという。メルセデス・ベンツGクラスに似せたグリルやトヨタのランクルもどき仕様など、遊び心でジムニーを楽しむユーザーも増えているようだ。ベース車両の今後の進化と合わせて、引き続き注目していきたいと思う。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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