【試乗】レーシングドライバー2人を思わず笑顔にした「AMG A 35」の高次元にバランスされた走りとは (2/2ページ)

現役GTドライバーが認めるバランスのよさ!

 まずは谷口選手がコクピットに乗り、僕は助手席から走りをチェック。谷口選手にとって、群サイは取材を通じて走り慣れたコースであり戸惑いなくコースを攻めて行く。助手席から見ても谷口選手のドライビングはスムースで無駄がない。初めて乗るクルマなのに、勝手知ったるかのように自在にライントレースさせる。タイヤはスキール音を出すこともなくフラットな姿勢で、タイトターンも高速コーナーもクリアしていった。谷口選手によれば「バランスがよくて走りやすい。パワーも十分でA 45から買い替えたくなった」とのこと。隣からもA 35の走りに納得している谷口選手の様子が伺い知れた。

 次に運転交代。僕はさまざまなドライビングモードを試させてもらうことにした。A 35にも「ローンチコントロール」が装備される。これはゼロ発進加速で誰でも簡単に最高性能が引き出せるという装置で、ほとんどのAMGモデルに標準装着されているのだ。まずESPを一押ししESPハンドリングモードか長押しでESPオフを選択する。ステアリングに設置されたドライビングモード選択ダイヤルでスポーツ以上を選択しステアリングを真っすぐの位置に持ち助手席共々シートベルトを装着して作動準備完了だ。シフトをDレンジに入れブレーキを強く踏み込みながらアクセル全開にすると「ローンチコントロールが使用できます」と表示され、アクセル全開のまま3秒以内にブレーキを離せば猛然とダッシュする。1、2、3速と自動シフトアップ。その加速力に谷口選手と顔を見合わせ互いに笑みがこぼれた。

 A 35はもちろん4輪駆動の4MATICを採用しており、306馬力、400N・mのエンジンが発揮する駆動力を余すところなく路面に伝えてくれる。7速のAMGスピードシフトDCTが変速ショックを抑え最適なシフトプログラムで変速してくれて文句ない。もちろんステアリングパドルを使用すればマニュアルシフトも可能であり走行状況に応じて好みのシフト選択ができる。

 サスペンションはドライビングモードでコンフォートからスポーツプラスまでダンパーの減衰力を無段階で切り替え制御してくれる。スポーツ以上では変速タイミングやエンジンのピックアップレスポンス、ステアリングの応答性も高まりエキゾーストのフラップも開いて迫力あるエキゾーストノートを引き出せるのだ。

 ベースとなる新型Aクラスのシャシー性能が高く、さらに捻り剛性を高める補強を随所に加えることで19インチにサイズアップされたピレリPゼロのハイグリップタイヤも余裕で履きこなしていた。

 コーナリングではそれらの相乗効果でまさにオンザレールの走りが可能だ。4輪駆動車特有のプッシュアンダーステアを示すことももちろんない。4MATICシステムは電磁機械クラッチの制御で前100:後0〜前50:後50までの範囲でトルク配分を無段階に切り替えており、前後左右Gやステアリング切り角、シフトポジションやアクセル開度、車輪速などから演算して最適な駆動力を得ているのだ。だからフルパワーを掛けてもホイールスピンを起こしてしまう場面もなく、思いどおりに操れるアジリティの高さが身上だとわかった。

 A 35はA 45とは異なり実用性が高く、走りにも満足できるバランス性が魅力なのだ。それはまさにC 43やE 53と同じ立ち位置にあり、多くのユーザーから高い支持を受けるのは間違いないだろう。

 GT 63でなく敢えてGT 53を普段の足として選択した谷口選手が、自身のA 45もA 35に乗り換えるのか。Edition 1は600台限定だから早めに決断するように促しておいた。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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