サプライヤーや生産部門と徹底的にこだわった! マツダCX-30の佐賀尚人主査が開発秘話を語る (3/3ページ)

素材の違いにもこだわったボディカラーにも注目したい

──バックドアは上側と中央が樹脂で、下側が鋼板なんですよね。同じ部位で素材が違うものを合わせ込むのは、かなり難しいのでは?

 佐賀:色合わせがすごく大変ですね。これも塗装技術とデザインのカラーチームが何回もやります。そして、本格的に生産を開始する前に、何回もトライアルをするんですね。それで合わせ込んでいって、工場に行って、実際のボディを日の光で見たり、そういったことを繰り返しています。ウチはこの点でかなりクオリティが上がっていると思うのですが、これも飛び道具的なブレイクスルーがあったわけではなく、そういった地道な共創活動の積み重ねですね。

──サプライヤーさんも関わってくる領域となると、余計に合わせ込みが大変ですよね。

 佐賀:そうですね、とくに色に関する所は。ですがすべてのサプライヤーさんが、デザインのカラーチームのチェックを受けて、色を最後まで合わせ込んでいます。そこでチェックに通らないと量産できない、それくらい厳しい管理をしていますね。さらに、デザイナーが作ったマスターの元々の色を、見本として管理していますね。

──とくにソウルレッドクリスタルメタリックは色味が変わりやすいので、合わせるのが難しいですよね。

 柳澤:ソウルレッドクリスタルメタリックとマシーングレープレミアムメタリックはやはり難しくて、光が当たった明るい所から陰の暗い所までの変化が大きいんです。ということは、明るい所から暗い所まで全部色を合わせ込まなければならないので。具体的には、アルミフレークの粒子を揃えるのを、鋼板は鋼板、樹脂は樹脂で、塗料が異なるにも関わらず、どちらも同じようにしなければならないので、それが非常に難しいですね。

──完成形のボディをそのまま塗装プールにドブ漬けするわけではないですものね(笑)

 佐賀:それができればどんなに楽か(笑)。

──鋼板は鋼板、樹脂は樹脂で別々に塗装しなければならないんですよね。

 柳澤 バンパーは内製していますが、バックドアの樹脂などはサプライヤーさんに作ってもらっています。その色味が全然違うとなると使えませんから。

 佐賀:そういう活動を、このクルマだから取り組んでいるわけではなく、新世代商品群に向けて良くしていくなかで、共創がどんどん生まれているんですね。お付き合いの長いサプライヤーさんはその辺を理解して、トータルで同じ方向へ向かっていける環境が、以前よりも随分できたと思います。だから、サプライヤーさんとマツダとの共創もたくさん生まれているんですね。心臓の鼓動のようにウィンカーが光る「ディミングターンシグナル」も、サプライヤーさんと共同で、マツダの考える「魂動」の光り方を実現するために非常に熱心に取り組んでいただきました。

──それは、一括企画だからこそできるようになったのでしょうか?

 佐賀:それもあると思います。方向性が定まっているので、することは形が変わっても一緒ですし、あとはコンセプトによってどういう味付けをしていくかということなので、目指す方向は一緒で、概念的な所はずれていないですね。昔は「こんなのできません」と言われることが多かったのですが(苦笑)。

──それを乗り越えたからこそ、CX-30ができたのですね。ありがとうございました。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
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ゲーム
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