【試乗】マツダCX-30は美しさだけじゃない! 抜群の走りやすさと使い勝手で日本の道にピッタリ (2/2ページ)

マツダ3よりも重いのに速く感じる!

 さて、最初に試乗したのがスカイアクティブD1.8搭載のXD Lパッケージ。マツダ3から採用した腰骨を立て、背骨のS字カーブに自然に添わせる最新設計の前席のかけ心地は、Lパッケージの本革シート×体重65kgの筆者だと、腰骨と背中のフィット感は見事なものの、本革表皮ならではの硬めの張りで、新骨格シートの売りである、お尻を沈み込ませることで得られる、体重でのサポート性は希薄。ファブリックシートのほうが、ふんわりとお尻が沈み込み、ソファ感覚の心地良いかけ心地と、それが可能にする自然なサポート性による、頭部、上半身の揺すられ感の少なさという点で、個人的には好みである。

 前席で印象的なのが、フロントドアのショルダーラインの高さ。おかげで、やや沈み込んだ着座感になるのだが、これが安心感、守られ感に直結。実際のボディサイズ以上のクルマに乗っているような感覚がある。ちょっと気になったのは、エアコンの内気循環モードのスイッチ。液晶画面には表示があるのだが、棚形状の横並びスイッチに表示なし。知ってしまえば押せるが、知らないと探してしまう。液晶画面同様の表示を望みたい(開発陣に注文済み)。また、横ワイド画面のナビゲーションディスプレーも、今どきとしては小さく、スマホとの連動も可能ゆえ、もっと上下方向に広い画面が欲しいところである。

 スカイアクティブDユニットは、アイドリング時のみディーゼルっぽい音と振動を伝えるものの、走りだせば「あれ、ガソリン車に乗っているんだっけ」と思わせるほど、全域でトルキーにして、スムースかつ静かなエンジンフィールを伝えてくれる。中高回転に至る滑らかな回転上昇感、重厚・濃厚な回転フィールもあって、ほかのマツダ車同様、ガソリン車のスカイアクティブGよりも上級感、高級感あるドライブフィールを味わわせてくれるのだ。

 コンパクトな、日本の路上にジャストなサイズ、最小回転半径5.3mの小回り性の良さもあって、とにかく街なか、狭い裏道、高速道路、駐車を含め、扱いやすさ、走りやすさは、クロスオーバーSUVとして抜群と言っていい。

 動力性能は、ズハリ、同パワーユニットを搭載しながら、より軽量なマツダ3よりも“加速感”で上回る印象だった。マツダ3に対して、6速ATの最終減速比のみ、車重増と大径タイヤを履いているぶん、加速方向寄りに変更しているのだが、むしろそう感じさせるのは、ここだけの話、排気系の制御がマツダ3よりも新しく、トルクカーブがよりフラット(棚がない)になっているからと推測できる。

 乗り心地、車内の静粛性は、いきなりクラストップレベルだ。とにかく18インチという大径タイヤを履いていながら、荒れた路面、段差越えなどの走行でも、乗り心地はじつにマイルドでしなやか。それでいてフラットな車体姿勢を貫き通すのだから、終始、快適で疲れない。

 CX-30にはさまざまなシーンでクルマの動きをスムースにし、クルマ酔い防止効果さえあるGVC(G-ベクタリングコントロール)、および、新たにブレーキによる車両姿勢安定化制御(直接ヨーモーメント制御)を加えて進化したGVC Plusを採用。直進時に無意識のうちに行っているハンドル修正の低減から、カーブや高速レーンチェンジでの水平感覚極まる車体制御、安定感極まるフットワークに威力を発揮する。

 しかも、ステアリングをほんの少し切っただけでノーズはごく自然かつリニアに向きを変えてくれるのだから、これまた運転のしやすさ、安心感に直結。その制御が過敏でなく、ルーズでもない絶妙なさじ加減が、マツダらしい人馬一体感あるドライブフィールを気持ち良く強調してくれるのだ。

 一方、スカイアクティブG2.0のガソリンモデルの走りは、より静かで軽快かつ、一段とすっきりとしたドライブフィールを示す。スカイアクティブD搭載車に対して車重が軽く、クラストップレベルのエンジンのスムースさがそう感じさせる主要因だが、スカイアクティブD搭載車同様、車重がマツダ3より重いにもかかわらず、ずっと気持ち良く、“加速感”で上まわるのだから不思議。6速ATの最終減速比を変更したことで、よりトルクに乗った加速が可能になったのが、その理由かもしれない。

 無論、先進運転支援機能も充実。自転車を検知する自動ブレーキのほか、渋滞追従型ACC、レーンキープアシスト、ブラインドスポットモニタリング、後退時左右接近物ブレーキサポートなどを用意。オプションで360度ビューモニターも選択可能だ。

 なお、横浜周辺の市街地40%、首都高60%走行での実燃費は、XD Lパッケージが17.6km/L、20S Lパッケージが12.5km/Lだった。オススメはほかのマツダ車同様、スカイアクティブD搭載のクリーンディーゼルモデル。そのファブリックシートの上級仕様となるXD PROACTIVE Touring Selectionをベストグレードとしたい。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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