2年以上の王者を倒してついにタントがトップ! 難攻不落のN-BOXを超えられた理由とは (2/2ページ)

N-BOXの優位点を研究してより上の存在を目指した

 その理由のひとつが、新しさ、つまり新車効果だ。9月はN-BOX(28484台)に続く2位(21858台)。増税後で落ち込んだ10月にはN-BOX(15782台)、スペーシア(12433台)に続く3位(11071台)だったものの、発売から4カ月たった11月は納車が順調に進んだタイミングと重なったとも考えられる。

 4代目となる新型タントは2019年7月に、ダイハツのまったく新しいプラットフォーム、DNGA(ロッキーにも使われているダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を初採用して登場。当然、開発時にN-BOXを見ているはずで、タントの大きな特徴でもあった助手席側Bピラーレスのミラクルオープンドアを継承しつつ、それを最大限に生かすロングスライド機構を、N-BOXが助手席側ならこちらは運転席側で!!とばかりに、世界初の運転席540mmロングスライド機構を新採用。

 それによって、助手席側から子供を後席に乗せたあと、車外に出ることなく、安全・快適に運転席に移動でき(運転席ロングスライド時の助手席とのすき間は最大約190mm~)、停車時、運転席から後席の子供のケアをしやすい……などの利便性をもたらすアピールポイントも効いているはずである。

 もちろん、2年前に発売されたN-BOXより鮮度で上まわることは間違いなく、あるいは、N-BOXファン、N-BOXを求めるユーザーがすでに購入し、所有している時期……とも推測できる。実際、走らせてみると、さすがタントは、上級のロッキーにも使われる新しいDNGAプラットフォームを採用するだけあり、走行性能でN-BOXをしのぐ部分もあり(とくにシートのかけ心地と乗り心地、カーブでの車体の傾きの少なさで勝る!)、比較試乗して、タントに軍配を上げたユーザーも少なくないはずなのである。

 また、N-BOXに続けということで、ターボモデルのみとはいえ、ACCを装備。それも現時点でN-BOXは全グレードにホンダセンシングとともに標準装備されるACCが約30~110km/hでのみ作動するのに対して、新型タントのターボモデルに標準装備されるACCは、スーパーハイト系軽自動車初の渋滞追従機能付(停車時の保持は2秒)で、ACCの有り難みをより感じやすかったりするのである(もっともタントの売れ筋は、ACC非搭載のNAモデルだが)。

 そんな新型タントは、価格アップを最上限に抑えつつ、全車に世界最小のステレオカメラによる15種類もの進化した先進安全支援装備=スマートアシスト、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドランプなどを標準装備。基本性能を含め、日本を代表する軽自動車メーカーとしていち早く先進安全支援装備を搭載したダイハツらしい、ユーザーに寄り添う見識と、まさしく打倒N-BOX! への強い意気込みを感じさせてくれる、走行性能まで飛躍的に進化した快作というわけだ。ある意味、日本のファミリー層、子育て層に、売れるべくして売れていると言っていい。

 もっとも、N-BOX購入予備軍もまだまだ相当数いると思われ、2019年上半期の新車販売台数No.1、2019年10月まで王座に君臨していたN-BOXが、2017年デビューとはいえ、この先の改良などで巻き返しを計る可能性は十分にある。2020年には、日本カー・オブ・ザ・イヤー2019-2020、スモールモビリティ部門賞を受賞した日産デイズ、三菱ekワゴン/ekクロスをベースとしたスーパーハイト系軽自動車の日産デイズルークス、三菱ekスペースの登場を控え、超売れ筋のスーパーハイト系軽自動車の戦いは、より熾烈さを増していくはずだ。N-BOXもスペーシアも、いや、タントもうかうかしていられない、スーパーハイト系軽自動車“祭り”の2020年になるのは間違いないだろう。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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