【試乗】アルピーヌA110Sはアンダーとは無縁! リヤの流れを気にする切れ味鋭いミッドシップ (2/2ページ)

集中しないとテールスライドしそうなほどキレのある挙動!

 サーキットを攻め立てた印象からすれば、動力性能は驚くほど高い。標準モデルに比較して40馬力増したエンジンパワーにある。1.8リッターターボの過給圧を引き上げることで292馬力という数値に達している。トルクは320N・mだから、1110kgに軽量されたボディを軽々と引っ張るのだ。いまどき500馬力級のパワーでもそれほど驚かなくなったけれど、292馬力でも十分に速く感じた。

 それは高回転で弾けるエンジン特性によるところが大きい。回転系の針の上昇に比例してパワーが嵩上げされていく。この積み重なる感覚が、数値からの想像以上にパワフルに感じる理由である。標準車との40馬力のエキストラ過給圧アップによるものだと予想していたが、それだけではなく、丁寧に調律されているようにも感じた。けして安易なチューニンクではなさそうだ。

 操縦性も刺激的である。ミッドシップ特有のシャープな旋回挙動が印象的なのだ。集中力高め、息を止めてコーナーに挑まなければ、テールのスライドに対応できない恐れがあった。それほど挙動はキレキレなのである。

 ノーズはピキピキと反応する。だらしないアンダーステアに陥ることは希だ。むしろ神経を注ぎたいのはテールである。急激なアクセルオフでもテールスライドを始めるし、かといってアクセルオンでもお尻がムズムズとする。たえずカウンターステアに身構えていなければならないのだ。

 まるでタイトロープの上を駆け足で渡り切ろうとしているかのようだった。そしていつしか、そのスリリングな挙動を楽しんでいる自分に気付く。タイヤの絶対的なグリップはそれほど高くはない。いたずらに目の覚めるようなタイムを追い求めてはいない。だからこそ、激しい挙動を楽しむことができる。そんなタイプのモデルなのだ。

A110S」はモータースポーツで一世を風靡したアルピーヌブランドでありながら、勝利至上主義ではなくドライビングプレジャーが色濃く受け継いで際立つモデルとして甦ったことは意外でもあった。


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