クルマのATは9速や10速があるのにほとんどのMTが6速までのワケ (2/2ページ)

ギヤを増やすことで重量が増えてしまうデメリットがある

 しかし、通常のMT構造で多段変速にするには各変速段のギヤセットを直線的に並べる必要があります。通常、縦置きで直結ギヤを持つ6速MTであれば、リバースを含めて6個のギヤセットを持っていますが、変速段を増やそうとするとギヤセットを増やすしかありません。

 つまりギアセットの分だけトランスミッションケースが長くなっていってしまうのです。トランスアクスルのFR車や、ミッドシップ、リヤエンジン車であれば巨大化したトランスミッションを搭載することもできるでしょうが、一般的なFR車、ましてFF車では大きなトランスミッションを収めるのは物理的に不可能といえます。また、ギヤセットが増えるということは重量増にもつながります。そうしたハードウェアの都合から乗用車のMTは6速が実質的な上限となっていると考えられます。

 もうひとつ、大型商用車の多段MTの操作には適切なギヤを選択するというドライバーの高いスキルが必要です。積載量によって発進ギヤを1速~3速の範囲で選ぶことは二桁段数を持つMTの操作では常識です。一般ユーザー向けの乗用車にそうしたスキルを求めることは考えづらく、ドライバーのレベルに合わせると6速MTが適切という面があることも否めません。

 ドライビングの一環としてクラッチ操作を楽しみたいのであればMTにこだわるのはアリでしょう。とはいえ、積極的なシフトチェンジにより好みの変速ギヤを選びたいというのであればパドルシフトなどのマニュアルモードを備えた多段ATにも独自のおもしろさがあります。いずれも運転が楽しめますから、MTとATに優劣をつけるのはナンセンスでしょう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報