日産やホンダはどうした! 「86・スープラ・GRヤリス」トヨタだけがスポーツモデルで元気なワケ (2/2ページ)

販売チャネルの統合によりトヨタも決断を迫られる

 このような違いが生じた背景には、複数の理由があり、まずは国内の販売規模だ。メーカーの発表によると、2019年度(2019年4月から2020年3月)の国内販売台数は、トヨタが158万7297台、ホンダは68万8615台、日産は53万4458台であった(いずれも小型/普通車+軽自動車)。トヨタの国内販売台数は、ホンダの2.3倍、日産の3倍弱だから、車種の数も増える。

 また国内市場の重要性も異なる。2019年度の生産と販売状況を見ると、トヨタは世界生産台数の18%を国内で売った。これに比べると、ホンダの国内販売比率は14%、日産は12%で、両社ともトヨタに比べて少ない。

 このようにホンダと日産は、国内販売規模が小さく国内市場に対する依存度も低いため、国内で売られる車種がカテゴリーを問わず減った。そうなると売れ行きが一層下がる悪循環に陥る。

 日産はこの傾向がとくに強く、国内販売順位はトヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位だ。そしてデイズ+ルークス+ノート+セレナの販売台数を合計すると、国内で売られる日産車全体の70%近くに達する。

 ホンダの国内販売ランキングは2位だが、N-BOXが国内で売られるホンダ車の30%近くに達して、軽自動車全体なら約50%だ。そこにフィットとフリードを加えると、約80%を占めてしまう。

 つまり日産とホンダにとって、今の国内市場は副次的な存在だから、商品開発の優先順位も下がった。「国内市場は軽自動車とコンパクトカーに任せておけばいい」と判断され、スポーツモデルに対する取り組み方も消極的になっている。

 そこでスポーツモデルはトヨタの弧軍奮闘となったが、今後の行方は分からない。2020年5月からトヨタでは全店が全車を扱う体制に移行するからだ。そうなると以前は東京地区を除くとトヨペット店の専売だったハリアー、ネッツトヨタ店のみが扱ったヤリスを全店が売ることになり、これらの人気車は売れ行きを従来以上に伸ばす。逆に販売が低調な車種は、売れ行きを一層落とす。

 全店が全車を売れば、車種ごとの販売格差が拡大することは、日産とホンダが系列を撤廃した後の動きを見れば明らかだ。両社とも系列を撤廃して全店が全車を売るようになると、不人気車が増えて車種の数を減らした。トヨタもそこを視野に入れ、要はリストラを意識して販売体制の変更に踏み切る。

 スポーツモデルはもともと売りにくい車種だから、全店が全車を扱えば、売れ行きを低迷させる可能性が高い。この流れに任せてクルマ好きの支持を失うのか、それともスポーツモデルの販売に力を入れるのか。トヨタの国内市場に対する思い入れが明らかになるだろう。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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