カタログの燃費はNAが圧倒も無双じゃなかった! ターボがNAを上まわる「逆転現象」が起こるケースとは (2/2ページ)

高速走行や長距離移動ではターボのほうが燃費が良くなることも!

 ターボがNAを凌ぐ燃費性能を発揮するのは、まず、高速走行だ。それも、距離が長ければ長いほど、ターボの燃費性能が伸びることがある。理由は、あくまで、NAと同じ速度を維持して走った場合だが、高速走行では非力になりがちなNAに対して、ターボは動力性能に余裕があり、エンジンを低回転で走らせることができるからだ。NAだと巡航時はもちろん、合流や加速、追い越し時にターボよりアクセルを大きく開ける必要があり、その場面ではかえって燃費が悪化する傾向があったりする。

 また、ACC(アダプティブクルーズコントロール)は、高速巡航において、個人的なデータながら、燃費が10%程度伸びることを実証している。たとえば、東名高速の東京~御殿場区間でACC不使用だと18.0km/Lのところ、ACCを使うと20.0km/Lオーバーを記録したことがある。ダイハツ・タントを例に挙げれば、NAにはACCの設定なし。ターボにはACCが備わり、ACCを使うことでの燃費性能向上が、ターボではかなうということになる。ダイハツ・タントやスズキ・ハスラーのように、ターボモデルにのみACCが付いているクルで、高速走行の機会が多いなら、ターボモデルの選択は、走行性能の余裕にとどまらず、燃費性能的にも有利になる可能性があるということだ。

 とくに空気抵抗の大きいスーパーハイト系軽自動車では、NAでもターボでも、高速走行での空気抵抗の大きさは変わらず、空気の壁を切り裂くためのパワーの大きいターボモデルが全体的な走行性能はもちろん、ACCの有無にかかわらず、燃費性能で勝ることもありうる。つまり、くどいようだが、軽自動車で長距離の高速走行を行う機会が多ければ多いほど、ターボの燃費性能が良くなる恩恵を得やすくなりそうだ。

 次に、これまでのNAとターボの比較試乗で、ターボの燃費性能が有利になるもうひとつのシーンが、山道の登坂路である。街乗りベストのようなNAモデルのパワーでは、箱根ターンパイクのきつい登りなど、アクセル全開でも汗、汗、汗……の動力性能になりがちだ(車種による)。結果、それなりの速度を保とうとすると、アクセルは深く踏みっぱなしになり、当然、燃費によろしくない。

 ところが、ターボモデルはアクセルの踏み込み量が圧倒的に少なくなり、登坂路も比較的スイスイと走れ、燃費性能に有利になるのである(エンジンノイズによる騒音ストレスも低減)。ちなみに、山道は登ればいつかは下るわけだが、下りの燃費性能は、NAもターボもじつは大きく変わらない。

 最後は、いつも急ぎ足、活発な走りをするドライバーだ。一定の速度に達するまでのアクセル開度がより少なくて済む、パワーとトルクに余裕があるターボモデルが、結果的に燃費向上に寄与することもありうるケースだ。いかにエコファーストなNAモデルでも、パワーが、加速性能が足りない!! と、常にアクセルベタ踏みになりがちで(先を急ぐ運転で)、持てる燃費性能の良さを発揮できなかったりする。

 一例を挙げれば、先代の日産デイズ・ルークス/三菱ekスペースのNAモデルがそうだった。そもそもスーパーハイト系軽自動車は高い車高、両側スライドドアによって車重がかさむ。それに当時は非力気味だったNAエンジンを組み合わせると、走行シーンによって、あくまで、パワー、トルクに余裕があるターボモデルと同じように走ったとすればの話だが、NAとターボモデルの、カタログ値で10%程度の燃費性能が逆転したことも、比較試乗で何度も経験済みである。もっとも、新型日産ルークス、三菱ekスペースを含む、最新のスーパーハイト系を含む軽自動車なら、NAエンジンも改良が重ねられ、よほどのことがない限りパワー、トルク不足に悩まされることはないが、かつてはそんなこともあったという話である。

 ただ、繰り返すけれど、市街地を中心に短距離をのんびりゆっくり走ることを常としている人なら、NAモデルの燃費性能が、額面どおり、上まわって当然ではある。そのあたりは誤解なきように……。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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