「本物のミッドシップ」は限界域でも難しくない! レーシングドライバーが語る「残念な」MR車とは (2/2ページ)

搭載位置だけでなく搭載バランスも運動性能には重要なポイント

 FFのパワートレインを流用した場合、エンジンの横にトランスミッションが横付けされている。それをそのままシャシーに搭載したら前後の重量バランスはミッドシップらしくなるが、左右の重量バランスはアンバランスになってしまう。またエンジンの下にオイルパンを抱えたまま搭載しているとエンジンの搭載位置が高くなり、重心が高くなってしまう。ドライブシャフトの取り出しがミッションケースから出される場合、パワートレインの搭載位置はリヤアクスルのほぼ真上となり、ミッドシップというよりはRR(リヤエンジン)レイアウトに近い特性となってしまうのだ。

 エンジンを横置きのままミッドシップとして成立させるのは難しく、フェラーリやランボルギーニにも搭載例はあったが性能面では大成していない。

 僕がこだわるミッドシップとはエンジンを縦置きすること。これで左右の重量バランスも改善しハンドリングを向上できる。またエンジンはドライサンプの潤滑方式に改め、エンジン下のオイルパンを移設して低い位置に搭載し重心を下げる。

 じつはスバルの水平対向エンジンとトランスミッションをミッドシップに適用すると、かなり理想的なミッドシップ用パワートレインになる。ポルシェのボクスター/ケイマンに近いパッケージングが可能なのだ。レーシングドライバーとして本格的なレーシングマシンであるFJ1600マシンをドライブしたが、このマシンに採用していたのは当時のスバルのパワートレインそのままだった。

 現行モデルで理想的なミッドシップレイアウトを採用しているといえるのはポルシェ・ボクスター/ケイマン、ランボルギーニ・ウラカン/アヴェンタドール、フェラーリ488などだが、それらはどれも抜群のハンドリングで高い限界特性とコントロール性を備え、ハイスピードドライビングの難しさを感じさせない。

 前後のタイヤサイズを適切に設定し、高いボディ剛性と軽量化を図ることも重要だ。そうしてミッドシップを追求していけば、かなり高額になってしまうのは仕方ないことだ。そういう意味でポルシェ・ボクスター/ケイマンは極めてお手頃な本格的ミッドシップモデルだといえるだろう。

 本物のミッドシップを知り「ミッドシップ最強」であることを正しく理解してもらいたい。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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