3〜400万円のクルマに載るシロモノじゃない! 量産だけど高精度なGRヤリスの「エンジン」の生産に迫る (1/2ページ)

高精度でも量産……この難題をクリアするための下山工場

 GRヤリスの心臓部は専用開発となる直列3気筒ターボの「G16E-GTS」だ。ボア87.5×ストローク89.7mmで排気量1618cc、圧縮比10.5、最高出力272馬力/6500rpm、最大トルク370N・m/3000~4600rpmと言うハイスペックだ。

 実際に乗ると、高出力の小排気量ターボながら扱い辛さは皆無で、谷間のないフラットなトルク特性とレスポンスの良さ、そしてレッドゾーン(7000rpm)を超えていきそうな伸びの良さや回転精度の高さやアクセルを踏んだ時の応答性やツキの良さなど、ドライバーの意志に反応してくれるエンジンだ。

 WRカーのエンジンとハードの共通性はないが、開発エンジニアはWRカー用のエンジンの製作を担当するTGR-E(旧TMG)で、「WRCでのエンジンのニーズ」を調査。そこでわかったのは、軽量/コンパクトであること、中低速トルクの豊かさとハイパワーの両立させること、そして扱いやすいこと……と、WRカーとロードカーが求められる要件に違いはなかったそうだ。

 では、このエンジンどこで生産されているのか? じつは限定発売された86のスペシャルモデル「86 GRMN」の専用エンジン「FA-20 GR」の生産はトヨタテクノクラフト(現TCD)が担当していた。性能のバラつきをなくすために1機ずつエンジン台に乗せ、匠の手による手作業で丁寧かつ慎重に組み付け。その後、全数を専用ベンチでテストを行なった後に出荷……と、工場というより工房といった世界に驚いたが、これは台数限定だから成立する事例で、量産モデルで同じ事を行なうと効率もコストもNG……。間違いなく400万円台での提供は不可能である。

「高精度を量産する」、この無理難題を実現可能な工場は存在するのか? そこに手を上げたのが「下山工場」だった。下山工場はトヨタの主力エンジンのひとつ「ZR」の生産を行なっているのに加えて、少量多品種の混流生産ラインを持っている。そこでの知見をGRヤリスのエンジン生産に活かせると考えたのだ。


新着情報