オシャレとエコ極まれり! EVのロンドンタクシーTXが「運転」しても「乗客」でも楽しかった【試乗】 (2/3ページ)

巨体でも最小回転半径4mで運転はラクラク!

 ロンドンタクシーTXはサスティナブルな電動車であるとともに、福祉車両としての側面もある。ほぼ直角まで開くリヤドア部分の床下には引き出し式スロープが格納され、簡単な作業で引き出し、格納することができる。ちなみに後席部分のフロア地上高は355mmと極めて低く、リヤドア開口部は幅830mm、高さ1315mmと広大。誰もが乗り降りしやすいだけでなく、車いすやベビーカーなどをスイスイと車内に運び入れることができるのだ(フロアが低いとスロープの角度が小さくなるため)。なお、実測で幅約1350mm、最大奥行1340mmものフロアには、滑り止め加工が施されているようで、雨の日でも滑りにくそうだ。傘を差したままでも乗り込めるリヤドア開口部、室内空間なのである。

 乗客のためのシートは、前向きに3座、後ろ向きに、映画館のような手押しで座面を押し下げるタイプの簡易シート3座の6人分用意されている。ドライバーズシートと後席スペースには、セキュリティーのためのアクリル製のパーテーションがあるのだが(料金受け渡し部分だけ小さく開いていて、トレイがある)、今ではソーシャルディスタンス、感染防止にも役立ちそう。ちなみに助手席の荷物用スペースは幅約550mm、実質奥行約720mm(ダッシュボード上部まで約670mm)である。

 では、めったに着ないスーツを着用して!? ロンドンタクシーの運転席に乗り込むとしよう。おっと、フロアは高いぞ。実測で地上高470mmと、アルファードのステップ地上高390mm、フロア地上高490mmと、フロア自体の高さは同等ながら、ステップがないので、一気に地上470mmの高さまで足を持ち上げなければならない。

 最新のボルボと同じスタータースイッチを回し、ロンドンタクシーTXを目覚めさせる。バッテリー残量が十分にあれば、もちろんEVとして始動する。視界は抜群だ。そもそもアップライトかつ、ロンドンタクシーの運転手が長時間座っていても疲れにくそうな上質なシートの位置が高めで、また、ボンネットが視界に入り、フロントドアのショルダー部分が、ドライビングポジションに対して相対的に低く、左右の視界にも優れているからだ。ボルボでおなじみの縦型ディスプレイは、当たり前だが運転席に向けられ、しかし表記は英語のみとなっている。

 ロンドンタクシーの運転手になった気分でジェントルに走り出せば、加速もまた英国紳士的にジェントル。今は100%モーター駆動だから、スムースで動力源からのノイズは皆無に等しいのだが、ゆったりとした加速感と表現すべきだろう。215/65R17サイズのタイヤを履く乗り心地はさすが、伝統あるロンドンタクシーらしく、マイルドで段差を乗り越えた際のショックも軽微。おおむね、乗り心地はよい。

 ただし、運転手目線で言えば、ACCやオートブレーキホールド機能が付いている点は現代的で嬉しいものの、直進性という面では、ややルーズな印象。速度にかかわらずビシリと直進してくれるクルマではないようだ。とはいえ、これだけの巨体にして、最小回転半径約4mの小回り性によって、曲がりやすく、Uターンしやすく、また路肩や料金所などに幅寄せしやすく、視界の良さもあって、極端に狭い道を除けば、恐れるほどのことはない運転感覚だった。

 ロンドンタクシーTXはシフターの操作で、アウトランダーPHEVのパドルシフトで行うような回生ブレーキのコントロール(強弱)も可能。ドライブモードとして、レンジエクステンダーを使わない「ピュアEV」、デフォルトの効率的な「スマート」、主にレンジエクステンダーで走り、電力走行距離を伸ばす「セーブモード」も備わっている。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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