日産ノートがフルモデルチェンジ! パワートレインはe-POWERのみでアリア譲りの先進的スタイルに大変身

プロパイロットがナビ連動になるなど先進安全装備も充実!

 日本向けの日産車ではデイズ、セレナに並ぶ人気のコンパクトカー、ノートが8年ぶりに世代交代。3代目となった新型は、ひと目見た瞬間「なんだこれは!?」と目が点になる驚愕のフルモデルチェンジだった!

 その一番の原因はなんと言っても、新しいNISSANエンブレムを各部に冠したエクステリアだろう。発売1年前ながら2020年7月に正式発表されたクロスオーバーEV「アリア」をそのまま低く小さくしたようなデザインで、未来のクルマが今この時代に具現化されたかのような錯覚に囚われる。初代および2代目ノートが無難にまとめられていたのとは好対照だ。

 しかしながら、全長×全幅×全高は4045×1695×1505mm(シャークフィンアンテナを装着する「X」グレードは1520mm)、ホイールベースは2580mmと、全幅以外は2代目ノート(同4100×1695×1520mm、2600mm)よりもむしろ小さくなっているのだから、驚くよりほかにない。

 インテリアも同様に未来的で、近年のフランス車、それも同じアライアンスのルノーではなく、ライバルのプジョーを思わせるアバンギャルドな装い。7インチのフルデジタルメーターと9インチのナビを組み合わせたバイザーレスのディスプレイ、手の平に収まるシフトノブ、フラットな形状に一新されたスイッチ類など、各部のインターフェイスを見て触れて、さらには通知音を聞いても、新世代のクルマに生まれ変わったことを体感させてくれる。

 走りのメカニズムも多くが一新されており、プラットフォームは新型ルノー・ルーテシアと共通のCMF-Bとなったことで、ボディ剛性は先代より30%アップ。サスペンションも10%、ステアリングにいたっては90%も高められているというから、そのハンドリングや乗り心地には大いに期待が持てる。また、最小回転半径が2代目e-POWERの5.2mから全車とも4.9mに下げられ、低速域でEPS(電動パワーステアリング)のアシスト量が増えたことで、狭い町中や駐車場での運転がより一層容易になった。

 2016年11月にマイナーチェンジされた2代目ノートが初搭載となった、シリーズハイブリッドシステム「e-POWER」も第2世代に進化。フロントモーターは70kW(95馬力)&254N・m(25.9kgf・m)のEM57型から85kW(116馬力)&280N・m(28.6kgf・m)のEM47型となった。だが、性能の底上げに留まらず制御も改善され、加速と回生ブレーキの効きがともに滑らかになり、駐停車時には新たにクリープ走行が与えられるなど、扱いやすさが格段にアップしている。

 さらに車輪速センサーから路面の凹凸を検知し、ロードノイズが高まる荒れた路面で優先的にエンジンを始動・発電し、滑らかな路面では発電頻度を下げる制御を初めて実装。バッテリー残量が少なくなるまでは極力発電しない制御ロジックもキックスに続き採用し、高い静粛性を長時間保てるよう配慮している。

 なお、2021年2月発売予定の「e-POWER 4WD」車もリヤモーターが変更され、最高出力が3.5kW(4.8馬力)から50kW(68馬力)へと大幅にアップ。後輪の回生制御も追加され、走る・曲がる・止まるの全域で運動性能と安定性を高めているというから楽しみだ。

 発電用エンジンは、2代目と同じく1.2リッター直列3気筒のHR12型で、最大トルクは103N・mと変わらないものの、最高出力が58kW(79馬力)から60kW(82馬力)にアップ。それでいながらJC08モード燃費は34.0km/Lから34.8km/L(「S」および「X」グレード。最廉価グレードの「F」は38.2km/L)へと改善され、より実燃費に近いWLTCモードでは総合28.4km/L、市街地28.0km/L、郊外30.7km/L、高速道路27.2km/Lと、低燃費に磨きをかけている。

 そしてADAS(先進運転支援システム)も大幅に充実した。高速道路で速度と車間距離を保ちつつ車線中央を維持するよう加減速・操舵アシストを行う「プロパイロット」に、ナビの地図情報をもとにコーナーの手前で減速する「ナビリンク機能」、制限速度に合わせて設定車速を変更する「標識検知機能」を追加。完全停止後に前走車への追従走行を継続する時間を、従来の3秒から30秒へと拡大した。

 事故発生時などに消防や警察へ通報する「SOSコール」、アダプティブLEDヘッドライト、ブラインドスポットモニター、リヤクロストラフィックアラートなども新たに設定している。ただし、これらの新機能はすべて、最上級グレードの「X」のみ、しかもオプション設定となっているのが非常に残念。一刻も早い全車標準装備化を願ってやまない。

 また新型ノートでは、2代目よりも意図的に割り切られた部分も多々見受けられる。まずパワートレインがe-POWERに一本化され、上級モデルの「メダリスト」が廃止されたのは、ビジネスユースを除けば影響は少ないだろう。

 だが後席空間は、依然クラストップレベルとはいうものの、ヘッド・ニークリアランスとも減少。ラゲッジルームはフロアボードをかさ上げできなくなったことで、後席の背もたれを倒した際、後席とラゲッジフロアとの間に大きな段差が生じるようになった。2代目ノートは後席居住性と荷室の使い勝手で唯一ホンダ・フィットに対抗できる存在だっただけに、この割り切りは心の底から悔やまれる。

 なお、新型ノートには専用の内外装を架装した「オーテック」が設定される(発売は2021年2月予定)。前後左右のメタル調フィニッシャー入りロアスカート、ドット柄のダーククロームメッキ入りフロントグリル、マルチスポークの16インチアルミホイールなどを装着したエクステリアは、ベース車よりもむしろ落ち着いた印象。だがインテリアは、シートやステアリング、トリム類にダークブルーのアクセントが入っており、ベース車よりも華やかで上質かつスポーティな印象だ。

 新型ノートはまずFF車の「F」「S」「X」グレードから2020年12月に発売され、それぞれ205万4800円、202万9500円、218万6800円と、中身は大幅に進化しながら価格の上昇幅は少なめ。フランス車のお株を奪う前衛的な内外装デザインが日本のユーザーに受け入れられれば、2代目ノートをしのぐ大ヒット作となる可能性を秘めている。果たして日産の復活なるか!?


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
-

新着情報