エンジン+モーター=「答え」じゃない! ハイブリッド車の「システム最高出力」の不思議 (1/3ページ)

この記事をまとめると

■ハイブリッド車にはエンジンとモーターを駆動に使うモデルも多い

■最高出力はエンジンとモーターそれぞれの数値が記載されている

■同時にそれぞれの最高出力が出るわけではないためシステムの最高値は合計より下がる

単純にエンジンとモーターの出力を足した合算値ではない

 ハイブリッドカーのカタログで諸元表を見ると、エンジンとモーターにそれぞれ最高出力と最大トルクが記載されている。では、ハイブリッドカーが車両全体として発揮できる最高出力(システム最高出力という)はエンジンとモーターを単純に足せばいいかのといえば、そうとはいえない。

 たとえば、日本を代表するスーパースポーツであり、その複雑なシステムからハイブリッドカーの最高峰ともいえるホンダNSXについて。システム最高出力は581馬力(427kW)、システム最大トルクは646N・mと発表されている(ホンダ測定値)。

 NSXはリヤを駆動するV6ツインターボとモーター、フロントの左右独立モーターによって駆動力を得ている。それぞれの最高出力はV6エンジンが507馬力(373kW)、リヤ駆動モーターが37馬力(35kW)、フロント駆動モーターが37馬力(27kW)×2基となり、単純に合計すると462kWとなる。また、最大トルクについてもユニットごとのスペックを記せば、エンジンが550N・m、リヤ用モーターが148N・m、フロントは左右それぞれ73N・mとなり、こちらも単純な合計では884Nmとなる。いずれもシステムで発揮できるスペックよりも大きい。

 なぜ、このようなことが起きるのだろうか。それはモーターとエンジンの特性の違いやモーターの最高出力と供給できる電力にギャップがあるからといえる。

 まずNSXを例に挙げたが、NSXのシステムは非常に複雑で、必ずしも3個のモーターがフルスペック状態で駆動するとは限らない。一方、同じスーパースポーツでもエンジンとモーターの出力をシンプルに足せるケースもある。

 その代表例が、フェラーリが2013年に生み出した初のハイブリッドカー「ラ・フェラーリだ」。F1テクノロジーを感じさせる『HY-KERS』と名付けられたハイブリッドシステムは、V12エンジンと前後それぞれに配されたモーターによって963馬力を発生できると発表した。これはエンジンの最高出力800馬力と、モーターの合計出力163馬力を足した数値とイコールになっている。

 こうした単純計算が成り立つのは、フェラーリの採用したハイブリッドシステムがパラレル方式といって、エンジンとモーターの出力がそれぞれタイヤに送り込まれる構造となっているからだ。もっとも、通常のパラレル式ハイブリッドではエンジンが苦手な低速領域をモーターがカバーして、高回転域ではモーターアシストを停止するという制御となっていることが多く、ラ・フェラーリのように単純計算で合計できるケースというのは稀だ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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