登場と同時に「シーマ現象」を一蹴! 「初代セルシオ」が示した「わかりやすい」高級感とは (1/2ページ)

世界の高級車に匹敵する静粛性と快適性が衝撃的だった

 日産自動車からシーマが発売されたのは、1988年のことだ。それまでにも、セドリック/グロリアの3ナンバー車や、トヨタ・クラウンにも3ナンバー車があったが、3ナンバー専用車という意味でシーマは新たな市場を切り拓いたといえる。もちろん、日産プレジデントやトヨタ・センチュリーは3ナンバー専用車種だが、それらはおもに運転手付きで乗るハイヤーや社用車として利用されるのがほとんどであったから、所有者個人が自らハンドルを握る3ナンバー専用乗用車として、シーマは希少な存在だった。

 80年代後半はバブル経済期であり、上昇志向による高級品の消費が右肩上がりとなっており、シーマはその象徴として取り上げられ「シーマ現象」といった言葉も流行った。排気量3リッターのV型6気筒エンジンは、自然吸気と過給の2種類があったが、250馬力以上のターボエンジンをフル加速させたとき、車体後部を下げて猛然と速度を上げていくさまはアメリカ車のように豪快だった。室内は、ホーンの位置に操作ボタンが並び、それを操作するためホーン部分が回転せず、ステアリングホイールのみが回る様子も独特で、それがシーマを運転しているという実感を強くもたらした。

 2年後の1990年に、トヨタからセルシオが誕生する。また日産からもインフィニティQ45が登場する。この2台が、米国でのレクサスとインフィニティという販売網の象徴的4ドアセダンであるのだが、セルシオ(米国ではレクサスLS)は3ナンバーの高級車として新たな価値をもたらし、日米市場で衝撃をもって受け入れられた。それは、名だたる世界の高級車にも匹敵する、あるいはそれ以上かもしれない静粛性と乗り心地の快適さだった。また外観は、どことなくメルセデス・ベンツに似ているところもあり、ドイツの高級車としてけん引してきたメルセデス・ベンツと競合しようとする意志を伝えてきた。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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