登場と同時に「シーマ現象」を一蹴! 「初代セルシオ」が示した「わかりやすい」高級感とは (2/2ページ)

あらゆる面で高級車という概念をわかりやすくしていた

 セルシオに乗ってなにより印象的なのは、その静粛性だ。アイドリングで停車している際の振動も極めて少なく、エンジンがかかっているかどうかわからないと思わせるほど、徹底した振動対策がおこなわれていた。

 それらの特徴は、なによりエンジンを始動したときから実感できることであり、シーマでV型ターボエンジンを猛然と加速させるような、特別な運転をしなくても日々実感できるセルシオならではの特徴であった。しかも、必ずしも運転に自信のない人であっても、乗ったとたんにわかる特別な感触だ。万人にわかる高級という価値を、セルシオは味わわせたのである。

 一方、インフィニティQ45は、シーマと同様に堂々たる走りではあったが、静粛性や乗り心地といった点においては必ずしも群を抜いてよいという実感をもたらさなかった。もちろん悪くはないが、高級さを直接的に実感しにくい印象があった。また、シーマとともにQ45も日本の伝統美を造形に織り込む独自性を示したが、それが必ずしも高級車の外観や風合いに馴染んだかどうかはわからない。逆に、メルセデス・ベンツのように思わせるセルシオのほうが、高級車という概念を分かりやすくしていた。

 のちに、3代目のシーマでは、国産車としてはじめて自動ブレーキ機能を持つ車間自動制御システムを搭載するなど、技術の日産を思わせる装備が採用されたが、高級車をわかりやすく多くの人に実感させる手法は、セルシオがなお上まわっていたかもしれない。

 結局、日米両市場においてもセルシオの分かりやすさが浸透したといえるのではないか。その後、国内においてもレクサスLSとして販売されるようになってからも、日本の高級車を象徴する一台として進化を遂げている。

 一方、シーマは2010年で一旦歴史を閉じ、12年にハイブリッドの4ドアセダンとして復活し今日に至る。インフィニティQ45は、国内は初代で終わり、シーマに集約され、海外ではシーマの兄弟車としてQ45の名称が与えられたが、2001年で生産を終えている。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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