単なる「高級車」以上の使命があった! トヨタ・センチュリーを途絶えさせてはいけないワケ (2/2ページ)

高級車を作り上げる匠の技を失ってはいけない

 センチュリーは、国内専用の高級車として生き残るため、モデルチェンジの機会を抑えながら、改良で存続し得たといえそうだ。それは単に投資を抑えたというだけでない、トヨタの狙いがあったのではないか。

 トヨタは、ほかの量産市販車では生産の効率化を進め、さらに匠の技のデータ化などにも取り組み、高度な生産技術の構築により、品質と原価低減の両立を模索してきた。しかし、センチュリーの製造においては、一台一台を手作りし、組み立て作業では4人の職人がすべての作業を行うことで生産し続けた。

 量産車での匠の技のデータ化をするにしても、そもそもの人の手による技が途絶えてしまったら先はない。また、初代トヨペット・クラウンの開発においても、国産の自社技術のみで製造することを志したように、トヨタは手もとに技術を残すことへのこだわりが、いまなお強いのではないか。

 ものづくりの伝統を継承する使命も、センチュリーには託されていると見ることができる。それであれば、途絶えさせるわけにはいかない。その意味で、センチュリーの存在は、単に世界の名車と伍す高級車というだけでなく、優れた自動車技術伝承の象徴といえるのではないか。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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