0分山だけどすり減った市販タイヤとは違う! レース用のタイヤはなぜ「テカテカ」「ツルツル」なのか (2/2ページ)

タイヤをめぐる駆け引きがレース結果を左右する!

 ちなみにレース用のスリックタイヤは前述のとおり、溝を排してタイヤの設置面積を増やすことでグリップを高めているが、市販のラジアルタイヤは別の話で、仮に摩耗して溝がすり減り、路面との設置面積が増えてきたとしても、グリップが高くなるわけではない。某タイヤメーカーでモータースポーツ用のタイヤ開発を担うエンジニアによれば「劣化に応じてゴムのパフォーマンスが低下するので、溝が減ってスリックのような状態になっても、グリップは上がることはありません。かなり危ないと思いますよ」とのことだ。

 ちなみにスリックタイヤに使用されているゴム、いわゆるコンパウンドは「ソフト」や「ハード」など、競技やメーカーに合わせて数種類がラインアップされており、スーパーGTのようにタイヤの競争が展開されているカテゴリーでは、さらに「ミディアム」、「スーパーソフト」など細分化。コンディションやチームの戦略に応じて選択できることから、タイヤをめぐる“カケヒキ”がリザルトを左右することも珍しくはない。

 さらに雨天時には排水溝の入ったウェット用タイヤもラインアップされているのだが、排水用の溝のパターンを含めて、その種類はタイヤメーカーによって千差万別。溝の深さひとつでパフォーマンスが変わってくるだけに、タイヤマネジメントがレインレースにおける見どころといえるだろう。

 なお、ジムカーナ競技の改造車クラスで使用されている“Sタイヤ”は、公道も走れるセミレーシングタイヤで、排水溝をレイアウト。ドライ路面でのグリップ性能とウェット路面での排水性を両立したタイヤでサーキットでも抜群のパフォーマンスを披露する。

 さらに近年はSタイヤに変わって、ハイグリップラジアルタイヤがモータースポーツシーンで活躍しており、全日本ラリー選手権やジムカーナのPNクラス、トヨタGAZOOレーシングの86/BRZレースで市販の高性能スポーツラジアルが活躍。タイヤメーカーも最新モデルを投入するほか、サイズラインアップを増やすなど激しい開発競争を展開しているだけに、今後もモータースポーツの経験をもとに、タイヤのパフォーマンスは進化を続けていくことだろう。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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