多数の客との接触に仮眠室! タクシー&バス業界がコロナ感染に苦しむワケ (2/2ページ)

仮眠室が感染源になりやすいと考えられる

 今回のケースに限らず、バスやタクシーの運転士が新型コロナウイルスに感染した際、その感染経路は、営業運行しているバス車内というものもあるが、それだけではない。車庫内での感染リスクが高いのである。「業務内容の関係から、どの車庫でも“仮眠室”というものが用意されています。比較的新しい建物などでは、畳敷きの大広間のようなタイプもありますが、多くはそれほど広くない部屋に二段ベッドが多くあるケースが目立っています」(前出事情通)。

 このようなケースの仮眠室であっても、感染予防策を積極的に講じる事業者もいるが、それは限定的となっているようで、仮眠室が感染源のひとつとなってしまっている。また、ケースによっては喫煙室もしくは喫煙スペースも感染源になりやすいようである。

 タクシー乗務員の多くは“隔日勤務”というシフトで働いている。車庫を出てから20時間ほど乗務して、出庫時間にもよるが、だいたいは翌日の夜明け前には車庫に戻ってくるというもの。東京都内でタクシー会社の車庫の多い、板橋区や北区での居酒屋のなかでは乗務明けの運転士をあてこんで、もともと午前4時ぐらいから営業を始めるところが多かった。東京都は現在緊急事態宣言発出中となり、飲食店には時短営業が要請されているが、その要請内容は“午前5時から20時まで”となっている。この“午前5時から”というのがタクシー業界に配慮されたものだとは思えないが、20時までは飲酒も飲食もOKなので、飲食店さえ休まずに時短営業していれば、緊急事態宣言発出前と環境はそれほど変わっていないことになる。

「乗務が明け、飲食店で飲食している時に感染し、そのあと仮眠室が利用されることで、感染させてしまうこともあるようです。そのようなケース以外でも枕や毛布などが共用されることもあり、仮眠室が感染源となるケースが多いと聞いています」(前出事情通)。

 業務内容を見ても、運行業務中におけるバスやタクシー運転士の感染リスクは高いといえよう。始発から終点まで路線バスに乗っていると、運転士にさまざまな問い合わせで話しかける乗客が多いことに驚かされる。ビニール製のシェードをどかして話しかけるお年寄も多いので、半開きで運行している運転士も多い。また、タクシーでは“コロナ慣れ”もあるのか、複数で得意先まわりするサラリーマンも多くなったようで、3人組みならば、そのうちのひとりが、コロナ禍前のように助手席に乗り込んでいる様子をよく見かけるようになった。

 当たり前のようタクシーが街に溢れ、バス停で待っていればバスが来るというのはコロナ禍前での当たり前の話。コロナ禍のいまでは、かなりギリギリ(ひとの問題)の状況で通常運行を維持していると考えてもらったほうがよく、当たり前のことが当たり前のことでなくなる(減便や運休など)リスクが確実に高まっていることは認識してもらいたい。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
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趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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