「2クラスは上だよ……」R5マシン解禁の全日本ラリー! 戦々恐々のスバル&トヨタ勢の見解 (2/2ページ)

R5の解禁はプライベーターにとっては夢のある選択肢

 このように明暗が分かれる開幕戦となったが、JN1クラスでR5が解禁されたことについて、いち早く、シュコダ・ファビアR5を投入した福永は「スバルやランサーの国内規定モデルでは、なかなかワークスに対抗できなかったけれど、R5なら市販モデルでトップ争いができるのでプライベーターにとっては夢のある選択肢だと思います」と語る。事実、福永は前述のとおり、R5のパフォーマンスを生かしてレグ1で3回のSSウインを獲得した。

 一方、R5の解禁についてスバルWRXを駆る新井敏弘は「日本のワイディングで純粋なレーシングカーであるR5を見られるようになったことは、ファンにとっても良かったし、国内ラリーの関係者としては歓迎すべきことなんだけど、同じクラスで戦うドライバーとしては厳しい。国際規定のR5車両は国内規定のRJ車両よりも2クラスぐらい上に位置するマシンなのでBOPが必要」とのこと。

 同じくスバルWRXを駆る鎌田も「圧倒的にパフォーマンスが違うので、スバルWRXでR5車両に勝つことは難しいでしょう。今後は“JN-Rクラス”を作るなど、JN1クラスとは別にしてほしい」と率直な印象を語っているが、ワイディングを舞台に争われるラリー競技は、サーキットを舞台にしたレース競技より、ドライバーの実力がリザルトに対するウェイトを占めるカテゴリーである。絶対的に有利なマシンを持つドライバーが必ずしても勝てるとは限らない。

 事実、今回の新城ラリーでもスバルWRXは安定した走りを披露。ドライのレグ1ではSSウインこそ奪えなかったが、テクニカルなSS1およびSS3ではシュコダ・ファビアとのギャップも少なく、レインのレグ2にいたってはSS5で鎌田がSSウインを獲得しただけに、ステージやコンディションによっては、スバルWRXを駆るトップランカーたちが、シュコダ勢に肉薄する走りを披露したことを証明した。

 つまり、R5はプライベーターにとって、ちょうど良い“ハンディ”で、新城ラリーを見る限り、十分にJN1クラスはコンペティティブなクラスとなっているように思う。

 加えていま大会で目立った成績を残せなかったが、トヨタのニューマシン、GRヤリスも熟成が進めば十分にトップ争いが進んでくるに違いない。新城ラリーは欠場したものの、次戦以降は豊富な実績を持つ奴田原文雄も自身が率いるチームよりGRヤリスでの参戦を開始するだけに、トヨタGAZOOレーシングの勝田とともに上位争いを左右するはずだ。

 したがって、R5解禁の“功”は、やはり迫力あるレーシングマシンのアクションを日本で見られるようになったことで、“罪”に関しては、今のところ見当たらない。もちろん、新井親子や鎌田、勝田、奴田原の上位ランカーがR5を導入すればワンサイドゲームが予想されるだけにJN-Rクラスの設定が必要になりそうだが、今のところはJN1クラスとして激しいポジション争いが展開されているだけに、今後の動向に注目したいものだ。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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