中谷塾「秘伝のタレ」的セッティングを公開! 中谷明彦が挑んだ久々の本気レース「ウラ話」その1 (1/2ページ)

デフォルトセッティングはかなりマージンを取った仕様

 TCRジャパンシリーズ開幕戦・富士ラウンド2戦(サタデーレース、サンデーレース)に参加させていただいたなかで、木曜日の練習走行から日曜日の「サンデーレース」決勝までに行ったさまざまなセットアップと効果について記しておきたい。

 木曜日は1時間の練習走行枠が2本設定されていた。使用できるタイヤは週末を通して5セット(20本)。まずは新品タイヤでデフォルト設定の状態で走らせる。久しぶりのFFレースカーと左足ブレーキに慣れること、ステアリングのスイッチなど覚えるといったことを目的として走行を開始した。

 ノーマルベースのエンジンゆえパワーは驚くほどではなく、スピードも近年は市販車でもストレートで250km/hを超えるモデルのテストなども行っているので目は追いついている。新品のタイヤはグリップ感が高く、ステアリングは電動パワーアシスト付きで軽く問題ない。新品のブレーキパッドはハードコンパウンドでガチっとしたペダルフィールだ。5ラップタイム計測ごとにピットイン/アウトを繰り返す。

 1分54秒台から始まったラップタイムは周回するごとに縮まり、19周目にこの走行時間の自己ベストタイムである1分51秒999を記録した。問題点は連続周回しているとブレーキのペダルストロークが深くなっていくこと。そして100Rなど高速コーナーやコーナー出口でオーバーステア傾向が強いことだった。FFでプッシュアンダーステアが強いと予想していただけに、コーナー出口でオーバーステアが出るのは意外だった。

 エンジニアのバロン氏(童夢所属のインド人エンジニア)に相談すると「リヤのダウンフォースが付けられる」とのことでリヤウイングを調整する。一方、Aコーナーの進入でもリヤが流れていく傾向から車高が高いと感じ、車高を下げることを提案。デフォルト設定はだいぶ車高が高く設定されていたようで、前後とも5mmほど下げる変更を行った。この走行1枠目では他車は1分48秒〜50秒のタイムを記録している。したがって最下位のタイムとなっていた。

 続く走行2枠目も1時間の走行時間がある。タイヤはそのままでコースインするが、その際にF1並みにピットロード出口でスタートの練習を行った。このTCR仕様シビックにはF1のローンチコントロールシステムを疑似的に再現するローンチストラテジが装備されていて(TCRではローンチコントロールシステムは禁止されている)、レースのスタートでは有用な武器になるという。そのために使用手順をマスターしておく必要がある。

 ローンチストラテジを作動させるには、

 【1】スタート地点で停止した際にブレーキペダルを強く踏む。
【2】ギヤをニュートラルにした後、ニュートラルボタン(ステアリングの白いスイッチ)を押しながらクラッチを踏み、右手パドルでローにエンゲージする。
【3】右手のサイドブレーキ状のレバーを手前に引く。
【4】メーターパネルサイドに白色のイルミネーションが点滅しローンチストラテジがアクティベートしたことを確認する。
【5】アクセルを全開に踏み込む。エンジン回転が最大トルク点で固定される。(4〜5000回転)
【6】右手レバーを離すと同時にクラッチを一気に繋げる。この間、白いニュートラルボタンはずっと押し続けていなければならない。
【7】一気に加速し、瞬時に2速へシフトアップ。白いニュートラルボタンをワンプッシュしローンチを解除する。

 こんな複雑な手順をスタート前の緊張状態で行わなければならないのだ。2回目の走行枠でも5ラップタイム計測ごとにピットイン/アウトを繰り返し、ピットアウト時には毎回スタート練習を行った。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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