トヨタの子会社が米国ライドシェア企業リフトの自動運転部門を買収する意味とは (1/2ページ)

自動運転部門の買収によって1200人規模のドリームチームができる

 トヨタの子会社で、AIや自動運転領域の開発で知られているウーブン・プラネット・ホールディングスが、アメリカやカナダでモビリティネットワークを提供しているLyft(リフト)社の自動運転部門である「Level 5(レベル5)」の買収を発表した。買収金額は5.5億米ドル(約590億円)といい、ウーブン・プラネットにとって初の買収案件となる。

 このニュースだけを見ても、ピンと来ないかもしれない。そもそも日本ではリフト社の認知度が低いだろう。大雑把にどんなビジネスを展開しているかといえばUber(ウーバー)と同様に、スマートフォンアプリを介したライドシェア事業を軸に展開している。一時期、楽天が出資(2015年)、三木谷浩史会長兼社長が取締役を務めていたことで、その名に見覚えがあるという人もいるだろう。ちなみに、三木谷氏はコロナ禍の2020年に取締役を退任、その際に楽天は約250億円の損失を計上した。

 というわけで、リフト社自体にはイキオイがないという見方もあるだろうが、今回トヨタの子会社であるウーブン・プラネットが買収したのは、あくまでもリフト社の自動運転部門のレベル5である。ライドシェアを展開している会社が自動運転を開発するのは米国企業にありがちな展開であり、驚くことではないが、独自のテストコースを持ち、400名のエンジニアを抱え、そしてパロ・アルト(サンフランシスコ)、ロンドン、ミュンヘンに拠点を持つという大規模な組織である。

 つまり、今回の買収によりウーブン・プラネットとTRI(トヨタ・リサーチ・インスティチュート)とレベル5を合わせた1200名規模のドリームチームが出来上がったことになる。さらに、トヨタの発表によれば『センシング、コンピューティング、ソフトウェア資産に加え、自動運転システム開発に必要な戦略的能力の強化』も果たせるという。

 自動運転というのは非常にホットな領域で、多くの人材が流入を目論んでいるカテゴリーではあるが、逆に言えば経験豊富なエンジニアが余っている領域ではない。その意味でも、これほどの人材を一気に仲間として引き入れることができるのは、ウーブン・プラネット(トヨタ)にとって、またとない絶好の機会といえる。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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