トヨタの子会社が米国ライドシェア企業リフトの自動運転部門を買収する意味とは (2/2ページ)

自動運転はデータ量こそ成功への近道となる

 自動運転というと、いかにも未来的なテクノロジーに思えるが、けっして一握りの天才がひらめきで開発しているものではない。一般論でいえば、自動運転の開発というのはリアルワールドでのデータ収集と、それらをもとにしたシミュレーションを繰り返すことで精度を上げる作業である。そのためには規模が勝負に直結するともいえるのだ。

 実際、ホンダが世界で初めて実現したレベル3の自動運転でも130万kmに達する公道での検証と、約1000万通りのシミュレーションが必要だった。経験は多いほど自動運転の実現につながるのだ。

 これまでレベル5が公道実験などで収集してきたデータは非常に価値があるものであり、それをウーブン・プラネットやTRIが持つデータと合わせることで、足し算でなく掛け算の価値が生み出される可能性は高い。

 現在ウーブン・プラネット本社が位置する東京に加え、パロ・アルト、ロンドンへと開発拠点を拡大できることも大きい。とくにロンドンで集めた自動運転に関する知見というのは、グローバルでの自動運転テクノロジーを開発するのに大きな力となることだろう。

 さらに、ウーブン・プラネットとリフトは、今回の買収に合わせてリフトのシステムと車両データを活用する自動運転技術の安全性と商用化を加速させる協業にも合意した。アメリカ・カナダでライドシェアを展開するリフトのサービスから得られるデータも自動運転の開発を進めるにはプラス要素である。

 なお、ウーブン・プラネットは約5.5億米ドルの買収金額のうち、約2億米ドルを支払い、残り3.5億米ドルを5年間で支払う予定と発表されている。つまり、協業関係も5年間は続くと考えられる。そうして、北米における経験値が増えることは、北米市場においてトヨタの自動運転が使える技術となることが大いに期待できるのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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