全店扱いでも「クラウン」は売れず! 「ステイタス」の高さゆえに悩める「王冠マーク」のゆくえ (2/2ページ)

姿が変わったとしてもクラウンの名は残すべきだ

 先日開催された、上海モーターショーにおいて、広州トヨタで生産されている、ハイランダーの兄弟車として、一汽トヨタは“クラウンクルーガー”を発表した。また一汽豊田はヴェルファイア改め、“クラウンヴェルファイア”も同時発表している。なお、セダンのクラウンは中国市場ではラインアップされていない。

 これは、ある意味世界一の市場規模を持ち、まだまだ市場が成長を続けている中国での実験でもあると筆者は捉えている。改革開放経済が本格的になった当初(1990年代前半)、その波にのって富裕層となったひとたちがこぞってクラウンを購入して乗った。改革開放経済がいち早く実施された華南地区にある広州市では、いまもなお、古い黒塗りのクラウンセダンを大切に乗っているひとを見かける。そのため、いまもなお年配層中心とはなるが、中国でもクラウンのステイタスは高い。

 若い世代もそのことはインターネットなどで承知のはず。ただ、すでにSUVがメインで売れている中国へ、再びセダンを投入するよりは、王冠のエンブレムをつけたクラウンと名乗るSUVやミニバンのほうが、新しい世代も取り込めると判断しているのかもしれない。

 アルファードは中国でも大都市を中心に人気が高いのだが、アルファードの属する“高級商務車”というカテゴリーで圧倒的なステイタスを持っているのは、上海GMで生産している、ビュイックGL8という高級商務車となる。貸し切りリムジンタクシーだけでなく、白タクでも、GL8というだけで料金は特別なもの(高くなり)となる。それだけ、中国ではステイタスが高いのである。アルファード系にもGL8並みのステイタスを与えるにはクラウンという車名と王冠エンブレムを与えるしかなかいと判断したのかもしれない。

 そして、この中国の動きは市場環境が異なるものの、日本でも十分当てはまる動きのように見える。良くも悪くも“特別なクルマ“としての印象の目立つ、セダンのクラウンではなく、SUVやミニバンならば、国内で新しくクラウンを扱い始めたトヨタ系ディーラーでも売りやすいのは間違いない。

 ただしミニバンはアルファードベースでも構わないが、中国のようなFFベースのハイランダーの兄弟車ではなく、レクサスブランドにも転用できるような、FRベースで格調の高いSUVのほうが日本ではいいかもしれない。トヨタはここのところ、世界市場だけでなく日本市場でもSUVのラインアップの緻密化を進めている。そのなかで、そして個人的にクラウンという車名は残すべきだと考える。そして、いま足りないのはフルサイズのクロスオーバーSUVだろう。クラウンSUVベースでレクサスを出せば、アウディQ7やBMW X7、メルセデス・ベンツGLS、キャデラックXT6(一部FFベース)と肩を並べるモデルとなるはずだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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