伝統のカングーか? 新鋭ベルランゴか? 世界一オシャレなフレンチミニバンをガチ比較! (2/2ページ)

アウトドアライフや車中泊ファンの注目度も高い!

 バックドアの開閉方式はそれぞれ個性的だ。カングーは6:4分割の横開き=観音開きドアを採用。車体後方にスペースがない駐車でも、荷物の出し入れがしやすい(ペットの飛び出し防止にも効果的)。一方、ベルランゴは一般的な縦開きで、開けるには車体後方に1m程度のスペースが必要になるのだが、なんとセレナのようにガラスハッチだけでも開閉し、実用性、荷物の出し入れ性はしっかりと確保されている。さすがである。

 こうしたMPVは、今、大流行のアウトドアライフ、車中泊ファンの注目度も高いはずだが、後発のベルランゴの場合、荷室奥行は通常時約1000mmながら、後席を格納するといきなり約1880mmまで拡大。助手席まで倒せば驚愕の約2700mmの長さとなり、長尺物の積載もOKだ。で、車中泊対応に話を戻せば、ベルランゴには加工なしで車中泊仕様に変身させられる純正ディーラーオプションの「agre(アグレ)ベッドキット」(受注生産)が用意されているのだから時代のニーズに合っている!!

「agre(アグレ)ベッドキット」を約1分で簡単に取り付けると、ベッド長1800×ベッド幅1200mm、厚み45mmの、高さ方向にも余裕ある、収納完備のベッドスペースが出現。大人2人でも足を伸ばしてまっすぐに寝られるのだから嬉しすぎるではないか。フランスらしく、カラーバリエーションも豊富でセンス良く、楽しい。価格は22万9900円~25万4100円と値は張るけれど……。

 カングーだってアウトドア、車中泊で活躍してくれることはもちろんだ。荷室の奥行は後席使用時で920mm、後席格納時で約1800mm、幅1100mm。身長180cm以下の人なら真っすぐに寝られることになる。幅方向はベルランゴより100mmほど狭いものの、シングルベッドの幅(970mm)よりはずっと幅広なのだから、たとえば男女、大人と子供の就寝であれば十分だろう。

 ちなみに室内の収納はさすがに両車ともに完璧。いたせり尽くせりの収納の数、使い勝手の良さに満足できるに違いない。

 先進運転支援機能については、デビュー年次の違いが明らかだ。カングーは未装備。一方、最新のベルランゴはアクティブセーフティブレーキ(衝突軽減ブレーキ)、ACC、レーンキープアシスト、トップリアビジョン/フロント・バックソナー、ブラインド・スポットモニター、インテリジェントハイビーム、トラフィックサインインフォメーション(標識認識機能)、ドライバーアテンションアラートといった安全装備を標準装備。さらに、ヒルスタートアシスト、電動パーキングブレーキ、キーレスエントリー&スタート、バックカメラ(障害物に近づくと俯瞰の疑似合成画像に切り替わる機能あり)、スマートフォンとの連携機能やワイヤレスチャージャーなども装備されるのだから極めて先進的だ。

 ただ、その分、価格はアップ。カングーのZEN EDC(2ペダルAT)グレードの264.7万円に対して、ベルランゴは318.6~355.8万円となる。

 では、両車の走りはどうだろう。動力性能に余裕があるのはもちろんベルランゴ。さすがにディーゼルっぽいサウンドは無視できないものの、乗り心地の上質さ、長時間の運転での疲れにくさは、ロングドライブの試乗経験からも、感動に値するレベルにあると言っていい。

 カングーも、絶対的動力性能では敵わないものの、これぞフランス車と言うおおらかでありながら快適無比な乗り心地、ベルランゴよりリニアな操縦感覚、カーブや山道での安定感の高さに、熟成の域に達した魅力がある。走りの総合評価では、カングーもあなどれないということだ。

 とはいえ、衝突軽減ブレーキなどを含む安全装備、先進運転支援機能にこだわるとすれば、選択はそれらが充実したベルランゴになると思う。その点、カングーは3代目となる新型に期待(当然、価格アップは避けられないだろう)……ということになるだろうか。言い方を変えれば、200万円台中半でフレンチMPVを手に入れたいならカングーであり、新型が発売される前の今がチャンスということでもある。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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