かつてはオデッセイやウィッシュがバカ売れしたのにナゼ? 「非スライドドア」ミニバンが消えたワケ (2/2ページ)

「ミニバンは両側スライドドア」が当たり前になった

 では、どうしてリヤヒンジ式ドアを持つミニバンが消滅したのだろうか。まずはミニバンならではの3列シートレイアウトにおいて、乗降性でスライドドアが圧倒するから、と考えるのが妥当だろう。そもそも開口部の間口が大きく、2列目席はもちろん、3列目席にだってアクロバティックな姿勢なしで乗り込めるのはスライドドアだ。

 しかもステップが低めで、フラットフロアが基本。天井も高く、なによりパワースライドドア車なら、リヤヒンジ式ドアのミニバンでは不可能な、運転席のスイッチ、リモコンキーで自動開閉できるのだから、乗降性でリヤヒンジ式ドアが敵うはずもない。室内温度の上昇を和らげ、外からの干渉をある程度防いでくれるリヤサイドウインドウ部分の実用度の高いロールサンシェードも、スライドドアにしか付いていないのが普通である。また、狭い駐車スペースで、ドアを左右に大きく開くことなく開閉でき、乗り降りできる便利さも、スライドドアならではだ。

 初代オデッセイ時代は、ファミリーカーに多人数乗用可能な3列シートがあるだけで嬉しがられ、ヒットしたわけだが、ユーザーがミニバンに慣れるにつれ、さすがに両側スライドドアのほうが圧倒的に便利なことを知ってしまったというわけだ。リヤヒンジ式ドアのミニバンは、ステーションワゴンと使い勝手的に大きく変わらず、しかも非ボックス型がほとんどだったため、3列目席は乗降性だけでなく、居住性もまたプアだったのである(ほぼ緊急席)。

 ミニバン市場が熟成すればするほど、「ミニバンは両側スライドドアを備えていないとダメだよね」という認識が広まったということは言うまでもない。そして、ミニバンにまでスポーティな走りを求めるユーザーは、今ではごく少数派ということでもありそうだ。

 ところで今、人気爆発、売れすぎのアルファードだが、以前、ライバルを圧倒する売れ行きの理由を開発陣に聞いてみると、そのひとつが1400mmの室内高だという。ちなみにライバルのはずの日産エルグランドの室内高は1300mm。その100mmの差が、LLクラスミニバンに求める室内空間の広さ感、天井の高さ感がもたらす贅沢さ、魅力につながっているとのこと(ノア&ヴォクシー、セレナもぴったり1400mm。ステップワゴンは1405~1425mmだ)。

 低全高なリヤヒンジ式ドアのミニバンの室内高がそれよりずっと低いことは言うまでもなく(1300mm前後)、「室内高1400mmルール!?」から外れた多くの全高を抑えたリヤヒンジ式ドアのミニバンは、ミニバンならではの室内の広々感、天井の高さを実感しにくかったため、ここ最近のミニバン成熟時代に生き残れなかったと言っていいだろう。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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