「悪燃費」と引き換えの「大パワー」は昔の話! なぜいまの「ターボ」はエコになれたのか (1/2ページ)

ターボテクノロジーはモータースポーツの世界で磨かれた

 1980年代に本格的に普及、近年ではダウンサイジングの立役者として脚光を浴びたターボチャージャーは、大気中に捨ててしまう排気ガスのエネルギーで吸気を圧縮、多量の空気(酸素)をシリンダー内に送り込むことで、効率よく高出力を実現するシステムとして発達を遂げてきた。

 とくにターボテクノロジーが大きく発展したのは、1980年代のモータースポーツ。1500ccで1500馬力を発生したF1や、燃費と高出力を高い次元で両立させたメーカーが優位に立ったグループCカーで、ターボチャージャーは魔法の風車と呼べるほど高い潜在能力を発揮してきた。

 ただ、ターボチャージャーの場合、排気流でタービンを駆動、同軸上にあるコンプレッサーで吸入気を圧縮する構造のため、スロットルバルブを開いた瞬間から過給効果が得られるまで、反応時間に遅れが生じるクセがつきまとった。いわゆる「ターボラグ」である。市販車より先に使用されたレーシングカーの時代から、自動車のターボチャージャーはこのタイムラグとの戦いだったと言ってもよいだろう。

 実際どういうことかと言うと、ターボチャージャーによる過給過程を思い描いてほしいのだが、最初の動きが排気ガスでタービンを回すことから始まるシステムであることがカギとなる。排気ガスの流れを受けてタービンブレードが回り出すことになるわけだが、タービンブレードや同軸上にあるコンプレッサーには質量があり、排気流を受けて回転が立ち上がり所期の回転数になるまで時間を要することになる。

 これがターボラグの正体で、ターボラグを可能な限り小さく抑えようとするなら、回転の立ち上がりや回転上昇を速くする必要があり、そのためには小径タービン/小径コンプレッサーの軽量ユニットが向くことになる。回転系の質量が小さければ(軽ければ)、排気流を受けてから所期の回転数に達する所要時間は短くなる。言い換えればアクセルレスポンスに優れたターボシステムということである。

 しかし、一方で小径タービン/小径コンプレッサーのユニットは、レスポンスに優れる代わりに過給空気の絶対量が小さくなってしまう。出力の絶対値を稼げないということになる。ターボラグを嫌い、レスポンスのよいターボシステムを構成しようと小径タービン/小径コンプレッサーのユニットを使うと出力が稼げず、逆に大出力を狙って大径タービン/大径コンプレッサーを選ぶと回転系の質量が増し、今度はタイムラグを大きく感じるターボシステムとなる特徴があった。


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