「悪燃費」と引き換えの「大パワー」は昔の話! なぜいまの「ターボ」はエコになれたのか (2/2ページ)

エンジン1基に対して4個のタービンを装着するクルマもある!

 ところで、ターボシステムの基本型は、エンジン1基に対してターボチャージャー1基を装着するシングルターボだが、V型6気筒やV型8気筒のようにシリンダーが2列ある場合(直列6気筒で前側3気筒と後ろ側3気筒と分けて考えるのも同様)、それぞれの列にタービンを1基ずつ装着するツインターボシステム、さらにブガッティ・ヴェイロン、同シロンのW型16気筒のように8気筒に対してタービン2基を装備。合計4基のタービンは、低速時は2基のみが作動し、残り2基は3800回転以上になると作動。2ステージ過給によるシロンは8リッターの排気量から1500馬力を発生、最高速度420km/h(リミッター作動)を記録したというとてつもないパフォーマンスを発揮した。

 実際のところ、ターボチャージャーは排気ガスの流れ(エネルギー)でタービンを回すため、排気量の小さなエンシンでは排気エネルギーが小さく(弱く)なり、大径タービン/大径コンプレッサーを回すには不向きとなる。想定する過給圧(出力)に対し、必然的に排気量に応じた適正サイズのタービンが決まるわけだが、ある程度の排気量、気筒数の場合、タービン1基で過給するシングルターボと2基で過給するツインターボの方法が可能となる。この場合、両者のタービンサイズは当然異なり、ツインターボの場合は受け持つ排気量(シリンダー数)に見合った小型なものとなる。

 さらにこのツインターボ方式には、過給の役割が異なる2種類のタービンを組み合わせて使うシーケンシャル方式が考え出された。ひとつは直列式と呼ばれる、低回転時過給用の小型タービンと中高速回転時過給用の大型タービンを切り替えて使う方式、もうひとつは並列式と呼ばれ、低速回転時はプライマリー1基で過給、中高速回転時はプライマリーとセカンダリー2基で過給を行う方式である。

 いずれもターボラグを解消するため考え出された方式だが、出力の絶対値はシングルターボ方式が優れること、大小2基のタービン切り替え時、あるいは作動時にトルクの谷が発生し、フラットな過給特性が得られない欠点が発生する例もあった。

 ターボチャージャーは、装着され普及していく過程で、タービンそのものの改良、また過給方式、過給制御方式の進化によって、当初大きく問題視されていたターボラグの問題は、ほぼ感じられないレベルにまで解消された。また、シングルターボとツインターボは、シリンダー数、シリンダー配置、排気量に応じて使い分けられてきた、と考えてよいだろう。さらに、ダウンサイジング(排気量の引き下げ)に対しても出力を補う有効な手段と考えられ、省燃費性能の上でも有利なシステムとして活用されている。


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