同じ「ワークス」でも似て非なる存在! 「TRD」「NISMO」「STI」「無限」の成り立ち (1/4ページ)

TRDが特装車から発展した

 自動車メーカー各社にはワークスチューンと呼ばれる直系のブランドがある。

 そして、ワークスという言葉には二種類の意味合いがある。ひとつはチューニングで、もうひとつがモータースポーツだ。ワークスチューニングという響きには、メーカー直系だからこその信頼性があるし、スーパーGTなどのモータースポーツ活動においても各ワークスブランドは中心的な役割を果たしている。

 そんなワークスブランドは、トヨタがTRD、日産がニスモ、スバルがSTI、そしてホンダは無限と認識されている。かつてはマツダのマツダスピード、スズキのスズキスポーツなどもあったが、いまではモータースポーツ活動もなくなり、ブランドとしてはデカールなどアクセサリーが残る程度だ。一方、三菱自動車におけるワークス「ラリーアート」は間もなく本格的に復活することが発表されている。

 とはいえ、TRD、ニスモ、STI、無限の4ブランドは一言でワークスチューンとしてまとめてしまうには、そのバックボーンは大きく異なっている。あらためてワークスチューンブランドのルーツを整理してみよう。

 まずはTRD、これはトヨタ・レーシング・ディベロップメントに由来するブランド名だが、会社名としては過去にも現在にも存在したことがない。現在は、トヨタカスタマイジング&ディベロップメントというトヨタ系のアフターパーツなどを扱う企業の一部門・ブランドという扱いになっている。それ以前でも、トヨタテクノクラフトのモータースポーツ部門のブランドといった位置づけだった。

 というのもTRDが生まれた経緯は、モータースポーツ活動ではなく、特装車の製作にあったからだ。源流といえるのはトヨペット整備会社で、主に中古車の再生事業を行なっていた。そのノウハウを活かして、のちに宣伝車やタイムトライアル車、はたまた劇中車などの特装車を手掛けるようになる。あの有名な「007」映画に登場したオープン仕様のトヨタ2000GTを製作したのも、2000GTのスピードトライアル車を製作したのも、トヨペット整備会社あらためトヨペットサービスセンターだった。

 その後、1974年にモータースポーツのサポート的な業務も始めるようになり、同センター内にTRD(トヨタ・レーシング・ディベロップメント)というブランドが誕生したのが1976年8月だった。トヨタテクノクラフトの主力は救急車などの特装車事業だったのは変わりなかったが、TRDブランドが浸透していくなかで、モータースポーツのサポートだけでなく、一般向けのチューニングパーツをリリースするようになり今に至っている。

 ちなみに、トヨタカスタマイジング&ディベロップメントの株主構成は、トヨタ自動車:90.5%、豊田通商:9.5%。ほぼトヨタの資本下にある直系企業であることは間違いない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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