「ハチロクはドライバーを育てるクルマ!」マンガか映画のセリフのような言葉の真相とは? (2/2ページ)

では、「現代のAE86的」マシンは存在するのだろうか

 こうした理由から、80年代のクルマ好きの若者は、諸先輩から「いいから黙ってAE86に乗っておけ」といわれたり、仲間の影響だったり、あるいは消去法的にたどり着いて、AE86に乗る人が多かった。

 AE86なら、お金がなくても楽しめて、走れば走るほどクルマに夢中になれて、そのうちGT-RやRX-7に憧れて……と、とにかく夢を見ることができるクルマだったので、AE86の生産中止後も人気はなかなか衰えず、「AE86育ち」のドライバーを増やしていったという歴史がある。

 一方で、1989年にスカイラインGT-R(R32)が登場したのを皮切りに、国産スポーツカーのパフォーマンスが飛躍的に向上したので、AE86を少々速く乗り回すことができても、より上のクラスのクルマにそのままスキルが通用することが難しくなり、エントリーカーもスターレットターボやシルビアなど、ターボモデルのほうが望ましいとなっていったのも事実。

 軽くて、安くて、そこそこ速くて、わりと気軽に、ノーマルに近い状態で、楽しくしっかり走れるクルマ……。AE86以降、そんなクルマはなかなかお目にかからなくなってしまったが、現行車で強いていえば、スズキのスイフトスポーツ(ZC33)か、マツダのNDロードスターぐらいだろうか。もちろん今のハチロク(ZN86)や今度のGR86(ZN8)も、候補に入ってくるが、NDロードスターも今の86も、車体価格が高すぎる。

 その点スイフトスポーツは、車両重量が970kgで新車価格が200万円。現行車で、かつてのAE86のポジションに近いのは、スイフトスポーツと考えるのが妥当なのではなかろうか。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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