550cc時代に64馬力を達成! 660ccになった今でも軽自動車の馬力上限が変わらないワケ (2/2ページ)

高回転での出力よりも低回転でのトルクが求められている

 今日でも、自然吸気エンジンでの実現には高度な技術やエンジン制御が欠かせないだろう。スズキがアルト・ワークスで64馬力を達成したのも、スポーツ志向の車種で、ターボチャージャーを装備しての成果だ。

 一方、軽自動車の基本は、適正な価格で多くの人々の移動を実現することであり、それであるからこそ、車体寸法やエンジン排気量に制約があり、また、軽自動車を利用する段階での税金や保険も安価に抑えられている。日常的な使い方では、発進と停止を頻繁に行い、また、巡行しても一般道の制限速度を守る走りが一般的で、高速道路を走るとしても時速100kmまでは十分な動力性能をすでに実現している。

 あえて最高出力を追求するのではなく、より低回転で十分な力を出し、4人乗車や荷物を積んでも不足なく走れる力量が軽自動車ではまず重んじられる。無暗に最高出力を追い求め、それによって価格が上昇したり、高回転を常用したりする走りは要求されていない。

 そして今日では、マイルドハイブリッドなどによりモーター駆動を併用し、日常的な使い勝手がさらに向上している。燃費性能もいまは欠かせぬ要件だ。カタログ上の数値という諸元ではなく、実用性を重視するのが軽自動車の自然吸気エンジン最大の役目なのだ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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