ステップワゴンが復活を狙い6代目をリリース! 歴代の「飛び道具」を振り返る (2/2ページ)

かつての人気を取り戻すために”わくわくゲート”が生まれる

 それをホンダが黙って見ているわけもない。2009年デビューの4代目ステップワゴン&スパーダは、3代目の反省!? もあってか、低床パッケージはそのままに、全高を45mm高め、今で言うMクラスボックス型らしいスタイリングで登場。3列目席は床下格納でき、大容量ワゴンとしても使えるパッケージが、ミニバンを使いこなせる人には好評だった。2010年には国産ミニバン販売台数NO.1の座を記録したほどである。エンジン、ミッション、エアコンなどを強調制御するいわゆるエコモードのECONがステップワゴンに採用されたのもこの4代目からである。ただし、2.4リッターエンジンは廃止。ファミリーミニバンとして適切な2リッターのみの設定となった。

 そしていよいよ2015年、現時点(2022年1月)で現行型となる5代目ステップワゴンが登場。ホンダ車初採用の1.5リッターダウンサイジングターボエンジンの搭載もニュースだったが、それ以上に話題を提供してくれたのがバックドア。それは左右非対称のわくわくゲートと呼ばれる、一体の縦開き、さらに玄関ドアのように横開きも可能な、サブドアを備えたものだ。すごいのは、5:5分割の3列目席=マジックシートを床下にすっきりと格納でき、バックドアの横開きサブドアから人やペットが乗降可能な点であった(バックドア内側にもオープナーがある)。つまり、ミニバンに第五のドアが誕生したというわけだ。

 わくわくゲートのサブドアは、、6:4分割の左右非対称、リヤバンパーレスということで、いまひとつ受け入れにくかったものの、ボックス型ミニバンのラゲッジルームの使い勝手を大きく進化させたのも事実。つまり、ボックス型ミニバンの巨大なバックドアを跳ね上げるには、車体後方に約1mのもスペースが必要だが、横開きのサブドアなら、車体後方に必要なスペースは、3段階のストッパーによって約400/640/760mmで済む。壁やクルマにバックでギリギリに止めても荷物の出し入れや乗り降りが可能となって超便利。ステップワゴンの場合、バンパー一体の縦長バックドア全体を大きく跳ね上げるには、車体後方に約1200mmのスペースを要するのである。

 2017年には待望のSPORT HYBRID i-MMDモデル=ハイブリッドを追加。走りの面ではクラストップレベルの実力、快適感を備えていた。

 走ればクラスベストと思える5代目ステップワゴンだったが、ライバルの安定人気のトヨタ・ノア&ヴォクシー、プロパイロットを備える日産セレナほどの人気は得られていない。2021年11月の国産ミニバン販売台数でも、ヴォクシー6711台、アルファード5423台、フリード5114台、ノア3888台、シエンタ3808台、セレナ3219台に続く7位の2916台にとどまっている(とはいえ前年同月比127.1%)。

 その理由は、先に触れた左右非対称バックドアが、どうやら女性の美意識!? に抵抗があったらしいのと、ノア、ヴォクシー、セレナでは可能な2列目キャプテンシートの左右スライド=ベンチシート化アレンジを備えず(キャプテンシートかベンチシートかの選択を迫られる)、またセレナにあるプロパイロットのような飛び道具もなく、ロングドライブ派にうれしいACC(アダプティブクルーズコントロール)の機能もイマイチ(ノア&ヴォクシーはACCそのものが不採用)などの要素が組み合わされたからだったと推測できる。

 とはいえ、モデューロXといったスポーティバージョンも揃える、日本のMクラスボックス型ミニバン=多人数乗用車のパイオニアであるステップワゴンは、今も標準車、スパーダともに走りの良さではピカイチの存在であることは間違いないところ(HVモデル)。個人的には、日常からアウトドアまで大活躍必至のわくわくゲートのクリエイティブムーバーの血を受け継ぐマルチな使い勝手の良さ、子供がワクワクできる楽しさはライバルにない大きな魅力だと思えるのだが……。

 しかし、ホンダは5代目ステップワゴンから6代目ステップワゴンへと、大きく進化させるはずだ。2021年いっぱいでオデッセイが消滅したわけだから、今しばらくはホンダの最上位ミニバンとなる。2022年1月7日、ジャパンプレミアがYouTubeで行われたが、四角さに安心と自由を落とし込んだ、すっきりとしつつタイヤの踏ん張りを強調したボクシーなエクステリア、シンプルかつ高級感あるリビングのようなインテリア、3列目席が特等席になりうる3列目席からの前方視界にもこだわったパッケージング、これまでにライバルにあってステップワゴンになかったキャプテン&セミベンチ自在の2列目席中寄スライド機構の採用(祝!)、オットマンなどの上級装備など、新型らしさ、オールマイティな使い勝手が満載だ。

 ただ、個人的に残念なのが、わくわくゲートが廃止されたこと(現行セレナはバックドアのガラスハッチだけ開閉する)。開発責任者が最後に「走るとすごいんですよ」というメッセージを残したあたりも、運転好きのミニバンユーザーにとって気になるところである。発売は2022年春とされている。楽しみだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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