タントの左側は「奇跡の開口部」! 改めて軽自動車で「ピラーレス」を実現したダイハツに敬礼 (2/2ページ)

良品廉価が問われる軽自動車での実現は企業努力による賜物だ

 前後ドアの間の支柱は、側面衝突の際に車内への侵入を防ぐ役目がある。したがって、この支柱がなければ、衝突してきたクルマなどが車内に入り込む恐れがある。そこで、ミラクルオープンドアは、前のヒンジドア後端と、スライドドア前端の内部構造に、支柱の機能を持たせる構造を持つ。前後のドアを閉じれば、内側の構造部が支柱の役目を果たす。また、その部分には、前後のドアを固定する機能も設けてある。

 一方で、前後ドアの端に支柱の構造を持たせることによって、ドアの重量が増すことになる。それを軽減するため、ダイハツは高張力鋼板という薄くて強い鉄板を用い、強さと軽さを両立している。ただし、高張力鋼板は高価な鋼板なので、低価格が魅力のひとつである軽自動車では、使い方を熟慮しなければ、原価に影響を及ぼす。それでもタントは、スーパーハイトワゴンという価値を最初に提案した車種であり、歩道側の前後のドアが大きく開けられる特徴を4代目のいまも保持し続ける。

 ミラクルオープンドアがあることで、子どもの乗り降りなど子育て家族にとって利便性が高まるだけでなく、高齢者の乗り降りや、福祉車両での助手席回転ドアの作動などで、開口部の広さを活用した商品性を持たせている。

 良品廉価が重視される軽自動車だが、単に原価を下げるだけでなく、適正な価格の範囲でどれだけ多くの消費者に有益な存在であり続けられるかが問われる。そのひとつの素材として、ミラクルオープンドアへの期待は高い。そのうえで、利点をさらに活かす利便性を開発しているといえる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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