「面倒臭い」とか言わずに「MT」で乗って欲しい国産車3台 (2/2ページ)

メーカーが本気で作ったMTマシンは今のうちに味わっておくべし

 トヨタとスバルのリアルスポーツカー、GR86、BRZも同様だろう。6速ATと6速MTが選べるのは、より幅広いスポーツカーファンに買ってもらえるように、楽しんでもらえるようにという配慮に違いないが、自然吸気のガソリンエンジン+MTという、もはや希少な組み合わせを継承してくれたことに、まず両車の価値がある。

 GR86やBRZのイベントに遠路でかけ、帰りに大渋滞に巻き込まれたら(大体、イベントは行楽客で道が渋滞する週末に行われる)、「ATにしときゃ良かった」なんて思うこともあるかも知れないが、希少性という事実、そして純ガソリンエンジンの比較的買いやすいリアルスポーツカーとして最後になるかも知れないことを考えると、今だからこそ、”最後に⁉︎”MTで乗っておきたい1台と言えるのだ。

 とはいえ、ロードスター、スープラ、GR86、BRZにATで乗ったら、クルマ好きの称号はく奪か? と言えば、けっしてそんなことはない。それはそれで堂々と乗ればいい。声高に「自分はスポーツカーを骨まで愛し、乗っています」と、クルマ好きの間で宣言しなければ、どうということはない。ATだってスポーツカーを存分に楽しめるようにつくられているからだ。

 が、国産車のなかに、AT(CVT)で乗ったら「アカン」と言われそうな1台として、GRヤリスが挙げられる。モリゾウさんのトヨタのスポーツカーへの愛、そしてモータースポーツ(WRC=世界ラリー選手権)のために開発された車両を、トヨタのモータースポーツ直系として市販化するという、この時代に男気を見せたコンセプトで登場したGRヤリスは、カタログモデルのラインアップを見てもわかるように、中間グレードのRZ、およびそのハイパフォーマンスグレードのRZ High performance (ともに4WD/1.6リッター、272馬力)は快適なシフトを実現したi-MTとはいえ、6速MTのみの設定だ。

 そしてベースグレードのRS(FWD/1.5リッター、120馬力)がダイレクトシフト-CVT(10速)のみとなっている。RSでもGRヤリスの走りのこだわり、スポーツ度は十二分に味わえるのだが、やはりGRヤリスというクルマの成り立ちを考えると、「男は黙って4WD、MTのGRヤリス」と言いたくなる。実際、約80%がRZ以上のグレード、つまりMTで売れているという(発売初期のデータ例)。

 希望的には、この先に発売されるフェアレディZも、ATとともに6速MTがあり、こちらも日米市場ともにMT人気が沸騰するはずのマニュアルで楽しみたいスポーツカーと言える(2代目のS130はアメリカンなスポーツカーでもあったので、筆者はATで乗っていた過去がある)。ただし、価格的にはATでも許されるキャラクター、クラスと言えるかも知れない。

 逆に言えば、ATで乗ってもまったく恐れることのないスポーティなクルマとは、そう、2ペダルしか設定されていないクルマということになる。スポーツカールックではないものの、スバルWRX S4(CVT)、レヴォーグSTI SPORT-R、ノートオーラNISMOなどなら、堂々とAT(CVT)で、こだわりあるスポーティカーファンとして乗っていられるだろう。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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