【試乗】日産サクラは単なるデイズのEV版じゃない! 特別感だらけの期待しかない1台だった (2/2ページ)

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 さて、eKクロスEVは外観がそれほど変わらないため、走り出してからのほうがガソリンモデルとの違いに驚いたのだが、サクラは内外装からして特別感たっぷりで、すでに期待値はマックス。デイズのガソリンターボ車の2倍以上となる最大トルク195Nmに対して、最大出力は同等の47kW(=約64馬力)となっているのは、開発者いわく「本当はもっともっと出せますが、自主規制です」とのこと。

 それでも、スタンダードモードで走り出せば、瞬時に力強い加速フィールが得られ、みるみるうちに一般道ではご法度な速度に到達する。今回はクローズドコースでの試乗のため、思う存分走らせてもらうと、もはや軽自動車に乗っている感覚はまったくなく、とても不思議な世界観。ボディは小さくても路面への接地感には重厚さがあり、ハンドルの操作感も落ち着いていて、立派な高級車の乗り味だ。

 試しにエコモードに切り替えてみたが、市街地で40〜60km/h程度で走るならこれがピッタリと思えるほど、自然なフィーリング。今回、アクセルペダルのみで減速操作ができる「e-Pedal Step」も採用されており、それぞれのモードでONとOFFが使い分けられるが、エコモードではe-Pedal StepをOFFにするのがおすすめだと言う通り、スルスルとコースティング状態のように軽やかな走りが味わえた。

 そして、スポーツモードにしてみると、背中をドンと押されたような強い加速感とともに、メリハリのある加減速。カーブでGをかけるような走りも、かなりスポーティに楽しめる。さらにe-Pedal StepをONにすると、もはやスポーツカーと言っていいほどのキビキビかつパワフルな走りに驚いた。本当は、これに加えてシフトレバーでのBモードも選べるため、組み合わせは多種多様。短時間の試乗ではとても試しきれなかったほど。

 モード切り替えのスイッチが、運転席の右下にあって見えにくかったため、その理由を聞いたところ、多くのユーザーは自分のお気に入りの組み合わせを見つけると、ずっとそれを使い続けることが多く、あまりあれこれ変えることがないのだとか。そのため、サクラではイグニッションをオフにして再びオンにした際には、前回の設定をキープするようにしたというのも興味深い。

 これまでのEVはどうも、未来感や非日常的な飛び道具に注目が集まりがちだったが、サクラはたまの休日にしか運転しない人ではなく、毎日のアシとしてクルマに乗る人の気持ち、行動に寄り添ったクルマづくりをしてきたのだなと、こんなところでも感じたのだった。

 運転だけでなく、ガソリンスタンドに行くのが苦手で高速道路が怖いなど、クルマそのものに苦手意識がある人にこそ、EVは馴染みやすいと感じているが、そうした人たちをカバーするためにも、スイッチひとつで車庫入れをしてくれるプロパイロットパーキングをはじめ、プロパイロットなど安全運転支援技術はしっかり用意。

 充電も、クルマを降りたら反対側に回ることなく、すぐに充電できるようにと、運転席側のリヤに急速充電と普通充電のポートを並べて設置している。充電時間の目安は、急速充電器で約40分(80%まで)、普通充電で約8時間(満充電まで)と使いやすい。航続距離も最大180km(WLTCモード)で、ご近所メインなら週に1、2回の充電ですみそうだ。

 内外装はEVらしさと、軽とはまったく違う特別感があるサクラ。でも使ってみると、今までの軽自動車のように暮らしに寄り添ってくれるのだろうと感じる。自宅に充電器の設置が難しいマンション住まいの人でも、週に1度の充電で済むなら十分に使えそうだし、価格帯的にも現実的(233万3100〜294万円)。

 アリアと並べて奥様や子供用の1台として車庫に置きたいというセレブもいるかもしれない。いずれにしても、「こんなEVを待ってました!」という人がどっと押し寄せそうな予感でいっぱいだ。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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