日産や三菱の努力があっていまの世界がある! 普及台数は中国や欧米に大負けだがEV先進国はニッポンだった (2/2ページ)

日本にはEVの本質的価値を見極めたクルマ作りをしてほしい

 そのうえで、一充電走行距離を含め、高性能化の一途をたどる欧米のありかたは、必ずしも21世紀のEV時代を最良に発展させる手本ではないと思う。それらは、18世紀の産業革命から20世紀の石油の時代にかけて、地下の化石燃料を掘り出し、密度の高い資源を地上で使い放題にし、環境問題を引き起こした手法をなぞるものだ。価値観は変わっていない。

 本来のEVは、電力を適切に使うことによって快適な暮らしを守りながら、環境にも負荷を及ぼさない社会を創造する象徴であるべきだ。その点において、日産と三菱自から新しく誕生した軽乗用EVこそ、性能と価格の調和を含め世界最先端だと思う。中国の格安なEVを除き、欧米の自動車メーカーでは必ずしも実現できていない分野だ。

 そして、ガソリンスタンドの代替のような高性能急速充電ではなく、自宅を中心とした普通充電でEVを走らせることこそ、本質的価値に迫るEVの利用方法であるとともに、リチウムイオンバッテリーの劣化を抑えながら資源を有効活用する使い方でもある。

 本質的価値の追求という点で、日本はなお世界最先端だと私は考える。石油を使いたい放題燃やしてきた20世紀の価値観のまま、より大きく、より速く、より高性能にというEVや急速充電の取り組みは、熟慮のないまま対処療法に翻弄させられる初心者の姿に見える。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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