エンジン車じゃできない車両制御ができる! EVはエコだなんだを無視しても可能性だらけだった (2/2ページ)

電動化による緻密な制御がさらにクルマを高性能化する

 さらに、前後へ振り分ける駆動力を、走行状況にあわせて配分する機能を加えることで、より精緻かつ無駄のない駆動力の伝達が行えるようになり、高性能車の4WD化が広がるようになった。

 それとは別に、電動化がはじまると、FWDを基本としながら、後輪に専用のモーターを取り付け、電動の4WDに仕立てる考えが現われた。この方式であれば、床下にモーターを配置する空間さえ確保できれば、FWDを主力とするクルマでも容易に4WD化できる。

 トヨタが、エスティマハイブリッドで実用化したE-Fourが代表的であり、今日では日産ノートe-Powerの4WDも同様の考え方を採用する。これにより、非降雪地帯ではFWDとして廉価に手に入れられるクルマを開発しながら、降雪地では4WDを選べるという融通がきくようになった。

 一方、EVやモーター駆動によるハイブリッド車は、ガソリンエンジンの100分の1という素早い制御と、タイヤが空転する前に回転力を電気的に調整できる利点を生かし、FWDであってもスタッドレスタイヤを装着すれば、必ずしも4WDでなくても降雪地でかなりの走行安定性を得られるようになっている。

 タイヤが滑る前に回転制御できるEVは、今後さらに高度化できる可能性を秘めている。単に環境適合だけでなく、モーター駆動は駆動力制御による走行安定性の向上という点において、エンジン車をしのぐ安心を運転にもたらすことができるのである。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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