ほとんどの人が見たことないけど超重要! クルマの「クラッチ」が奥深すぎる世界だった (2/2ページ)

構造が少し違うだけで大きく特性が異なる

 もうひとつ、クラッチの枚数にも違いがある。

 MT車の純正クラッチは通常シングルタイプ。シングルタイプで伝達力を上げるには、ディスクフェーシング(摩擦材)の外径を大きくするか、フェーシングの摩擦係数を上げるか、圧着力を上げるしかないが、より伝達力を高めるには、クラッチディスクの枚数を増やすほうが効果的。

 クラッチディスクを2枚にしたのがツインプレート、3枚にしたのがトリプルプレートと呼ばれる。

 多板クラッチにすれば、伝達力が上がるだけでなく、クラッチ径が小さくなることで慣性が小さくなり、エンジンレスポンスもよくなり、ペダルの踏力も少なくて済む。

 また、切れがよくなりつながりもシャープになるが、その反面、半クラッチが使える領域は狭くなるので、発進や渋滞は辛くなる。

 また、クラッチの枚数と耐久性には直接の関係はない。寿命の長さは、使い方とパワー次第で決まる。

 またクラッチにはダンパー付とダンパーレスの2タイプがあり、ダンパー付は半クラッチが使いやすく、ミッションの振動を吸収し、ミッションへのストレスも軽減できる。

 一方、ダンパーレスのディスクは、部品単品の重量が軽くなるので、キレやつながりがよく、シフトフィールが向上するが、半クラッチはシビアになり、ミッションへのストレスも高くなる。

 このようにクラッチの種類が多いのは、それぞれ長所と短所があって、使い道が異なるため。

 またクラッチは一種のヒューズの役割を持っていて、クラッチが滑ることで他の駆動系やエンジン本体を過負荷から守るパーツにもなっているので、いたずらに容量を上げて強化クラッチにすればいいわけではない。

 クラッチを交換するときは、重視する性能と予算をよく考えて、自分に最適なクラッチをチョイスするようにしよう。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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