クラウンファミリーの先陣を切る「クロスオーバー」はSUVにあらず! 新ジャンル「リフトアップセダン」の正体とは (2/2ページ)

スタイリッシュなセダンの新しいスタイル

 さらにボディ形状もSUV的ではない。リヤウインドウが斜めになっているのでハッチゲートのように見えるかもしれないが、トランクが独立した4ドアクーペといったボディになっているのだ。

 開発陣にヒアリングしたところ、スタイリングのわかりやすいイメージとして「リフトアップセダン」という表現が出てきたが、まさにその表現こそクラウンクロスオーバーの理解を助けてくれる。クラウンがSUVになったのではなく、スタイリッシュなセダンの新しい表現として大径タイヤと組み合わせたスタイルを提示したと捉えるべきだろう。

 もっとも、冒頭で記した4つのバリエーションのなかには、純粋なセダンもあり、ハッチバック(スポーツ)もあり、典型的なSUV(エステート)もある。しかし、最初にクラウン・クロスオーバーを発売するというのは、クラウンはけっしてセダンを捨てるわけではなく、しかし確実に変化を求めているという意思の現れといえるだろう。

 さて、新型クラウンの基本メカニズムは、エンジンを横置きプラットフォームとハイブリッドシステム(すべてリヤをモーター駆動する4WD)の組み合わせとなっている。ホイールベースからするとトヨタやレクサスのSUVを中心に使われているGA-Kプラットフォームの一員を想像するかもしれないが、それは違うという。たしかにフロントまわりはGA-Kプラットフォームの発展形といえる設計だが、マルチリンクサスペンションなどリヤまわりは完全新設計となっている。

 ハイブリッドシステムも新しいものだ。

 2.5リッターエンジンと組み合わされるハイブリッドユニットはお馴染みのTHS2となるが、リヤを専用モーターで駆動するE-Four(電気式4WD)を標準仕様とする。バッテリーもバイポーラ型ニッケル水素電池とすることで、燃費と出力のバランスをとっている。

 この2.5リッターハイブリッドのシステム最高出力は172kW(234馬力)、WLTCモード燃費は22.4km/Lとなる。車両重量1750〜1790kgのクルマとして見ると、かなり良好な燃費性能といえる。実際、同じく2.5リッターハイブリッドのE-Fourを採用するRAV4のシステム最高出力が163kW(222馬力)で、WLTCモード燃費が20.3km/Lであることと比べると、あらゆる面でクラウンクロスオーバーは洗練されていることが理解できる。

 ハイパフォーマンスグレードには、まったく異なるハイブリッドシステムが搭載される。こちらは2.4リッターターボエンジンとモーター、6速ATの組み合わせによりフロントタイヤを駆動、リヤはリヤにはインバーターとモーターを一体化したeアクスルによって駆動するという構成になっている。

 2.4リッターターボとモーター、6速ATそれぞれの間にクラッチを配置することで、エンジン+モーターの出力をATに送ることもできれば、エンジンを切り離したEV走行も可能。さらにエンジンとモーターをつないで発電に専念させることもできるといったものだ。こちらのハイブリッドでもバッテリーはバイポーラ型ニッケル水素電池となる。

 気になるパフォーマンスは、システム最高出力が257kW(349馬力)というあたりから想像しても、クラウンとしては過去イチといえるだろう。さすがに燃費性能は15.7km/L(WLTCモード)とハイブリッドに期待するほどではないが、こちらのパワートレインはターボエンジンとモーターを組み合わせたことでリニアリティと超絶トルクの両方を味わうために生まれたと理解すべきだ。

 シャシーで注目したいのはDRS(後輪操舵機構)を全車に標準装備している点だ。低速域ではフロントと逆相にステアすることで5.4mという最小回転半径を実現。さらに中速域でも逆相ステアを意識的に使うことで軽快な走りを演出。高速域ではフロントと同相にリヤを動かすことでクラウンらしいスタビリティを実現しているという。

 先進運転支援機能においても、スイッチを押すだけでほぼ自動的に駐車する機能やスマートフォンを利用したリモート駐車、さらに条件次第では渋滞時にハンズオフが可能な機能などクラウンという名前にふさわしい“おもてなし”機能が備わっている。

 なにより嬉しいのがクラウン・クロスオーバーの価格設定だ。

 メーカー希望小売価格は、2.5リッターハイブリッドで435万円~570万円。2.4リッターターボハイブリッドは605万円~640万円となっている。これは先代クラウンよりも手の届きやすい価格帯であり、革新的なメカニズムの採用を考えるとバーゲンプライスといえそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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