中国メーカーBYDの日本参入は「想像以上」の脅威! 海外メーカーには日本が「おいしい漁場」に見えている (2/2ページ)

価格設定によっては日本メーカーにとって脅威となりかねない

 日本国内で見ればアメリカのBEVとなるテスラを日本でもよく見かけるようになったなぁと思うのだが、BEVの流通台数の多い中国メディアによると、それでも「苦戦している」と捉えているようだ。テスラの日本国内での普及や、直近では日本国内販売トップのトヨタから登場したbZ4Xや、日産のアリア、そして日産と三菱から発売された軽自動車規格BEVなどがラインアップされ、日本の消費者もそれなりにBEVへの興味を示してきたので、BYDの今回の発表をベストタイミングとも報じていた中国メディアもあった。

 単純な乗用車販売の話とは異なるが、報道によると京都MKタクシーが、韓国ヒョンデ自動車のBEVとなるアイオニック5をタクシー車両として導入するとのことなので、このトピックもBYDを刺激したのかもしれない(BYDもすでに試験販売という形で、自社のBEVをタクシー会社に納めているとのこと)。

※写真はMKタクシーのBMW 740e

 バスなどの大型商用車、そして乗用車、どこを見ても日系メーカーのBEVへの取り組みの出遅れははっきりしている。それなのに日本政府は2050年カーボンニュートラル宣言など、脱炭素社会の実現を国際公約しており、いまの状況では、少なくとも自動車については、脱炭素社会を加速度的に進めるには外資メーカー車に頼らざるを得なくなるのではと考えるのは自然の流れ。

 BYDが最新モデルの日本市場導入を決めたのは、いまだに日本では「中国車=コピー車=品質低い」といったイメージが固着している人が多いこともあり、それを打ち消したいという側面もあるのかもしれない。しかし、それは完全に過去の話。少なくとも見た目や品質、デザインなどへの最新トレンドの導入では日本車を超えているといっていいレベルになっている。

 しかも、中国系メーカーのほとんどは、中国国内メインとはいえ、すでにかなりの量のBEVをラインアップして販売している。そして、中国の街なかにはBEVタクシーやBEV路線バスが溢れている。つまり、生産及び販売実績は、日系メーカーよりはるかに豊富なのである(経験は絶対的に多いということ)。

 またBYDならではの特徴といえば、搭載されるバッテリーも自社製になるということ。つまり、バッテリーも含めクルマ全体の品質を一元管理することができるというのは、安心感という面ではメリットが大きいだろう。

 いままでなら、日本市場参入に際して自社で販売やメンテナンスネットワークを日本でも構築させることになるが、そこは商才に長けている中国系企業。自動車関連ではない異業種、たとえば大手スーパーや大手家電量販店、大手テレビ通販会社などを販売窓口にするなど、流通面でもあっといわせるものになるのではないかともささやかれている。

 メンテナンスについては、たとえばEVバスを納車しているバス事業者の整備工場の活用など、効率的でユーザーも安心して乗ることができるネットワークの構築を進めるかもしれない。

 BYDとしては、自社の充電機器を積極販売するなど、BYD単独で日本でのBEVビジネスを丸抱えするつもりはないとしているが、すでにBEVバスでは約7割のシェアがあり、事業者がBEVバスを新規導入する際には充電インフラ整備などについてのコンサルティング業務のようなことも行っている。「ファーストペンギン」ではないが、いち早く市場でシェアを確保し、それに付随する充電インフラの整備などで「BYD流」のシステムを構築すれば、後発メーカーも高い販売シェアを持つBYD流に従って進めなければならなくなるだろうから、BYDの優位性はこの点でも揺るがないものとなるだろう。

 BEVバスについては、日本市場に導入するモデルでは日本製パーツの積極採用なども行い、昨今のサプライチェーンの混乱騒ぎなどを意識した対策を行っており、乗用車でもその点では何らかのフォローがされていることだろう。

 日本国内ではBEVのラインアップ増のスピードが、中国系も含め外資が圧倒的に速いことは寂しいかぎりだが、それがいまの日本のものづくり現場の実状であり、外資ブランドから見れば、それはただただ好機にしか見えないのである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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