先代クラウンの不振はアルファードの台頭が原因! 新型クラウンが挑む「次期アルファード」との仁義なき戦い (2/2ページ)

クラウンvsアルファードの仁義なき戦いが始まる

 そして、アルファードがここまで売れる理由は、現代のクラウンがアルファードになったからだ。外観に存在感があり、内装は豪華で、車内は後席を含めて広い。4名で乗車して快適に移動できる。この特徴は両車に当てはまるが、アルファードは背が高いから、クラウンよりも外観の存在感は強い。内装の豪華さは同等としても、車内の広さはミニバンのアルファードが勝る。

 つまり、アルファードが絶好調に売れるのは、クラウンとの勝負に勝ったからだ。かつてクラウンを専門に販売していたトヨタ店からは「全店で全車を扱うようになって、当店でもクラウンからアルファードに乗り替えるお客様が急増した」という声が聞かれる。

 そうなると、クラウンの時代は終わったともいえるが、前述のようにトヨタとしてはクラウンの廃止は絶対に避けたい。そこでSUV化という異例の展開になった。

 アルファードについては、トヨタブランドの実質的な最上級車種に就任したから、高価格のグレードも用意される。ハイブリッドを搭載するエグゼクティブラウンジSは775万2000円だ。確かに高価格だが、先代クラウンにV型6気筒3.5リッターハイブリッドを搭載した最上級グレードも約740万円だったから、アルファードが際立って高いわけではない。

 むしろ、アルファードを割安と受け取るユーザーも多く、好調な売れ行きに結び付いた。先ほどのトヨタ店は「政治家や企業のトップがアルファードを使う様子がTVニュースなどで流され、イメージアップに繋がった」と述べた。

 アルファードハイブリッド・エグゼクティブラウンジSにツインムーンルーフ(12万1000円)、ITSコネクト(2万7500円)、寒冷地仕様(2万6400円)を加えると約800万円に達するが、それでも車内の豪華さ、広さ、充実した装備などによる快適性を考慮すると、買い得感が伴う。

 加えてアルファードの場合、残価設定ローンの残価率(新車価格に占める残価の割合)は、3年後で55%と高い。これは数年後に高値で売却できることも意味する。一方、先代クラウンの残価率は、3年後でも40%台と低かった。法人ユーザーにとっては、資産価値の保全という意味でも、アルファードは魅力的だ。

 仮に800万円のアルファードが3年後に新車価格の55%で売却できれば、その金額は440万円だ。3年間の価値の減少は360万円で済む。しかし、740万円のクラウンを新車価格の45%で売却すると、333万円だから、3年間の価値の減少は407万円に達する。つまり、先代クラウンは、高価なアルファードよりも、大きな値落ちが生じる可能性がある。

 このように、身内のクラウンとの勝負を含めて、いろいろな好条件によってアルファードは売れ行きを伸ばした。果たして新型クラウンは、フルモデルチェンジを行う次期アルファードに勝てるのか?


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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