さよならオデッセイ……だがすぐ会える可能性も!? 一世を風靡したホンダのミニバンは何が凄かったのか5世代一気見せ (2/2ページ)

復活の可能性アリ?

 そこで、2013年に登場した5代目オデッセイは、オデッセイ初の両側スライドドアを備えるとともに、全高を1695mm~に拡大。国内のホンダのフラッグシップミニバンとしての堂々感、3列目席を格納することで大容量ワゴンとして使えるパッケージング、使い勝手の良さなどが魅力だったが、なんとも乗り心地はハード。知り合いが先日、5代目初期型アブソルートの中古車を買ったのだが、家族から「後席の乗り心地が硬い」と大ブーイングを浴びたらしい。とはいえ、ライバルメーカーのミニバン開発者から「ミニバンの皮を被ったスポーティカー」と評される運動性能は文句なしだった。

 で、今回、2020年末に行われたe:HEVアブソルートのビッグマイナーチェンジ車両に改めて再試乗。ビッグマイナーチェンジのハイライトはまず、顔つきのブラッシュアップだ。ボンネットを高め、厚みを持たせることで力強さを増幅。オラオラ顔とは違うジェントルな大人っぽさを残しつつも、今流行りの”迫力顔”になったというわけだ。さらにヘッドライト、グリル、バンパー、フェンダーなども一新。これまでとは別物の顔つき、フロントビューになったと言っていい。インテリアではインパネ、メーター、シート表皮を一新。質感をさらに高めているのが特徴だ。装備面でも光が流れるシーケンシャルターンランプ、パワーテールゲート、ジェスチャーでスライドドアが開閉するパワースライドドア機構、その予約ドアロック機能なども追加されている。

 そんな新型オデッセイの注目点は、国産ミニバン最上のかけ心地と言っていいかも知れない2列目プレミアムクレードルシートだ。もっと豪華なキャプテンシートはあるにはあるが、ゆりかごのように、シートバックをリクライニングさせても顔が正面向きのままになる中折れ機構、シート表皮裏に約3センチものソフトウレタンを奢った贅沢な座り心地の良さ、そしてシート振動のなさはもう絶品である。もちろん、最大170度のリクライニング機構を備え、ビジネスクラス並みのエクスクルーシブな居心地の良さを誇る。

 先進運転支援機能のホンダセンシングは最新とは言えないものの、十二分な内容で、電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能(ヴェゼル、ステップワゴンにあるメモリー機能はなし)も備え、ACCの作動も悪くない。

 最終型のオデッセイe:HEVアブソルートを走らせれば、アブソルートならではの硬質な走りの質感、スポーティな操縦性、ミニバンとは思えないフットワークテイストはそのままに、18インチタイヤ(または17インチ)とノイズリデューシングホイールを履く乗り心地は劇的に改善され、濃厚なタッチを示してくれるのが印象的だ。家族からのブーイングなど出ないであろう乗り心地(決して柔らかくはないが)、完成度を誇る最終型と言っていい。夜、スライドドア部分のサイドウインドウ下端にイルミネーションが光るアイディアもなかなかだ。試乗したe:HEVアブソルートの実燃費は、WLTC総合モードの19.8~20.0km/Lに対して、高速道路50%、一般道50%の走行で18.0km/Lを記録。このサイズのミニバンとしてなかなかの燃費性能を発揮してくれたことも、最後に付け加えておきたい。

 もし、そんな最終型オデッセイを手に入れたいのであれば、お店に急ぐ必要があるが、ホンダ関係者に聞いてみると、日本においてオデッセイが絶対に復活しない……ということではないようだ。中国で人気を維持する輸出仕様のオデッセイは来年フルモデルチェンジが予定されているらしく、そのタイミングで日本でもオデッセイが復活する可能性はないとは言えない。当然、打倒アルファードの新型になるはずで、期待は膨らむ。本題は「さよならオデッセイ また会う日まで」だが、「また会う日」はそう遠くないかも知れない。「おかえりなさい、オデッセイ」そう言える日が、2代目アブソルートV6を10年以上愛用した隠れオデッセイファン!? のボクとしては、とてもとても待ち遠しい……。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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