【試乗】軽に電気自動車を組み合わせると「軽」を超える! 日産 サクラの上質さにうっとり (2/2ページ)

軽自動車の質感を超えている点にも注目

 ドアを開けて驚かされたのはインテリアの上質さ。最近の軽自動車は登録車からのダウンサイザーが増えてきたこともあって、ずいぶん立派になっている。それらと比べても、サクラのインテリアの出来映えは別格だ。先進的なフラットパネルを中心に据えた新設計。大らかな造形で描かれたインパネは全面にファブリックをあしらう手法が新しい。上級仕様のGグレードに至っては、カッパー色のアクセントが存在感を増し、上質な雰囲気をいっそう引き立てる。内装色は3タイプ。シートはトリコット素材のブラックまたは淡いベージュが選べるほか、合皮×トリコットのコンビネーションの3タイプが用意されている。

 サクラのパッケージングに目を向けると、デイズの2WDモデルと比較して最低地上高が10mm低く、全高は15mm高い1655mm。それでいて車内の広さはデイズと変わらず、床から天井までの室内高や前後のホイールの間隔、後席の膝まわりと荷室の奥行きを調節できるロングスライド機構など、シートアレンジの手法も変わっていない。

 バッテリーはリーフe+(62kWh)と同じラミネートタイプを採用。高さを自在に変えて組み上げられるため、居住空間や実用性を犠牲にしていない。初めての電気自動車として乗り換えたとしても、自然な感覚で向き合えそうだ。

 内外装でも表現されていたが、サクラが目指したのは“軽自動車離れしたワンクラス上の質感”。

 それは走りにも顕著に現れていた。モーターで走る電気自動車は、振動や変速ショックから解放されるシームレスな加速フィールが特徴だ。エンジンは回転が高まらないと本来の力を発揮できないが、モーターは踏んだ瞬間から力強いトルクが立ち上がり、余裕をもって駆け出すことができる。今回の試乗は3名乗車で一般道と高速道路を走ったが、アクセルペダルをそこまで深く踏み込まなくてもラクに車速を乗せることができた。登り坂や高速の合流といった場面は、本来であればエンジンが回転を高めて唸り音が車内に響きわたりそうなものだが、サクラはそうした時のノイズがないからじつに快適。

 少し前にプロトタイプをテストコースで試乗する機会を得たが、その時よりも荒れた路面を走っている状況でもロードノイズが小さく感じられた。それにしても、サクラの操縦安定性の高さと乗り味の良さは、もはや軽自動車の域を超えている。軽自動車は狭い道でスイスイ走れるコンパクトなサイズで重宝される反面、4つのタイヤが狭い間隔で構えているところに重心の高さがあいまってフラツキやすい素性といえる。一方でバッテリーを床下に敷き詰めたサクラは低重心で、なおかつ、リヤの足まわりはデイズの4WD用の3リンク式リヤサスペンションをベースとしながら、車重が増す電気自動車用の特性に合わせて再チューニングが行われた。

 しなやかな乗り心地はうねりを伴う路面や車線変更で快適に過ごせるほか、ドライバーはステアリングの操作に対して意のままにクルマの姿勢を変えていける充実感を得ることができる。いずれにしても軽自動車とは思えない快適性と思い通りに走れる安心感を与えてくれた。アクセルペダルの踏み込み加減ひとつで加減速ができるe-Pedalも採用されており、一般道から高速まで、車速に応じて違和感なく使いこなせるような制御も施されていた。丁寧なペダル操作を心掛ければ、アクセルからブレーキペダルに踏み換える手間が減り、減速時はエネルギーを積極的に回収して、アクセルを踏んだ時に再利用。クルマと息を合わせて走れる楽しみも得られる。

 こうして一般道で試乗してみると、軽自動車×電気自動車の組みあわせは地球環境とモビリティが共存する上で理に適っていると思った。軽自動車は、普段の移動の足として活躍する乗り物であるし、今や日本の乗用車販売の約7割を占めている。レアメタルなど、限られた天然資源を少しずつ分け合い、そのぶん、電動車が手に入れやすくなって多くの人に行き渡れば、本来の意味で環境との共存に一歩近づくのではないだろうか。かつて、軽自動車には三菱 i-MiEVやスバル R2の電気自動車が存在していたが、あれから10年ほどの時を経て誕生したサクラは、軽自動車ならではの手軽さや向き合いやすさに、電気自動車ならではの先進性と上質さ、乗り味のよさを織り込んできた。

 電気自動車のラインアップが多彩になってきた今だからこそ、日産ならではの軽自動車×電気自動車がもたらす新しい価値が電気自動車の普及に向けて流れを変えてくれるのではないかという予感を感じさせてくれた。


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