「改良でまたクルマの値段が上がった」と言うは簡単! その裏にある自動車メーカーの葛藤と血の滲むような努力とは

この記事をまとめると

■最近の新車は価格が上がっている

■しかし各メーカーの努力によって価格上昇を抑えているように思える

■従業員の給料が上がりにくいなどの弊害もある

いまの新車価格は内容を考えるとむしろ”割安”!?

 現状、新車市場ではいくつかの問題が事態を混乱させている。まずは納期遅延。納車を待つ期間が単に長引く、つまり「半年後に納車となります」という話ではなく、「あくまで納期未定ですが、半年以上は待つ覚悟をしてください」という感じで、生産現場がかなり不安定な状態となっている。

 そして、人件費、燃料費、原材料の高騰による世界的な物価高である。日本では人件費の高騰は目立っていないものの、いまや日本で完成車製造する際にも、海外製部品を多数使用している。現地工場作業員の人件費高騰、そして出荷時のトラックや船の燃料代、部品を構成する部材の高騰は、新車の製造原価を間違いなく押し上げている。輸入車は過去にも為替相場の急変などで単純な車両価格の値上げを行っているが、日本で販売される日本車では、単純な車両価格の値上げは近年では筆者の知る限りではない。ただ、車両価格をアップしないと、自動車工場などで働く人の給料は上がりにくくなるという負の連鎖が続いてしまうだろう。

 直近のフルモデルチェンジや一部改良モデルを見ていると、新型シエンタについては予約受注期間に聞いた話では、「もっとガッツリ価格が引き上がるかと思った」とのこと。ちなみにハイブリッドG 7人乗りで新型は現行モデル比で20万円強の価格アップとなっている。

 新型クラウンではクロスオーバーはFFベースのAWDになるなど、そもそもガチンコでの比較は難しいが、単純に“新しいクラウン”として比較すると割安感が目立っている。

 6月末に一部改良(ホンダではマイナーチェンジ)したホンダ・フリードはHEV(ハイブリッド)となる、FF G 7人乗りで7万5000円、HEV FF クロスターで10万2000円の価格アップとなっている。また一部改良を行ったスズキ・ワゴンR スティングレー HYBRID T 2WDは改良後に3万5200円アップとなっていた。

 改良後の価格は車種により、新型がどこまで変わっているか(たとえばフルモデルチェンジならばキャリーオーバー[先代モデルからの流用]が多いのか、それともプラットフォームや搭載エンジンの刷新などまでやっているのか)なども加わってくるので、“値上げ幅”として見てしまうとバラバラに見えてしまう。結局は個々のモデルで細かく改良による装備の充実内容などを照らし合わせる必要があり、その損得判断は難しくなっているといえよう。いかにも日本社会的対応のようにも見えてくる。海外のように“イヤーモデル制度(毎年小規模でも改良を行う)”を採用したり、単純に値上げしてもらったほうがわかりやすい。

 ただ、どのメーカーも増えたコストを単純に価格に上乗せするなど、いまどきの改良についてコスト上昇分をガッツリ価格に乗せる好機と捉えているようにも思えない。つまり企業努力で価格転嫁を極限まで抑えているようにも見える。そうなってくると当然の話だが、今後は車両価格からの値引き額が従来より引き締まってしまうケースが、価格設定に割安感があるモデルほど目立ってくるだろう(車両本体価格からの値引き額が減った分は下取り査定額の上乗せなどでフォローされることがより目立ってくることも考えられるが、それも限界があるだろう)。

 値引きありきでなく、たとえば定価購入もしくは、一定額のエクストラチャージを払うと納車が優先される(早くなる)など、いまどきの“特典”を用意するのも、消費者にとっての選択肢を増やすという意味では有効かもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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