たかが「顔」の違いが天国と地獄に! ヴェルファイアがアルファードのたった「4%」しか売れないワケ (2/2ページ)

フロントマスクの僅かな違いが明暗を分けた

 さらに2021年4月の一部改良では、ヴェルファイアのバリエーションを大幅に減らして、特別仕様車のみの設定とした。この影響で2021年の1カ月平均登録台数は、アルファードが約7900台、ヴェルファイアは560台と大差が開いた。2022年上半期は、先に述べたとおりアルファードが約5800台、ヴェルファイアは約240台という販売格差に至っている。

 この経緯を見ると、自動車ビジネスの恐ろしさを実感できる。クルマは最先端技術が集約されたメカニズムの集合体で、価格も高いのに、フロントマスクのわずかな違いによって売れ行きが明暗を分けてしまう。現行型の外観が少し違っていたら、ヴェルファイアが生き残り、アルファードは廃止されていたかも知れない。

 クルマには嗜好品的な性格もあり、定番的な人気車も、次期型ではどうなるかわからない。語弊のある表現だが、クルマはメーカーや販売会社にとって、賭博性の強い商品といえるのだ。

 もうひとつ、全店が全車を扱う販売体制も、アルファードとヴェルファイアの残酷な販売格差を助長した。アルファードのような人気車は、全店で好調に売られ、不人気は逆に一層落ち込んでしまう。

 そのために、2010年までに全店が全車を扱う販売体制に移行した日産やホンダでは、実用的で価格の割安な車種だけが生き残った。趣味性の強い高価格車は、かなり駆逐されている。

 自動車業界の先輩達が築いた販売系列は、当初は大量な販売を目的にしていたが、実際には万人向けではない個性的な車種を大切に育てる役割も果たしていた。今の市場規模を考えると、全店が全車を扱う体制に移行したのも納得できるが、車種を守る意味ではマイナスに作用している。

 そして車種の削減も、全店で全車を扱う目的のひとつだ。アルファードとヴェルファイアのように、自然に廃止すべき車種が浮き彫りにされ、リストラをスムースに進められる。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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