もと「中の人」がぶっちゃける! 歴代「三菱ランエボ」にランキングを付けたら意外な結果だった (2/2ページ)

本当の激速モデルはじつはワゴンだった!?

 3番目に上げるのは歴代エボで最速モデルとなるエボVIII MRだ。エンジンやトランスミッションの強化に加えACD(アクティブセンターデフ)のキャリブレーションを最適化し、またAYCはキャパシティを高めたスーパーAYCとして一層の効果を引き出した。

 十勝24時間レースで鍛えたトランスミッションはショット加工にトリプルコーンのシンクロギアを奢られていたのだ。また独・ニュルブルクリンクで本格的な走り込みを行い、ラップタイム8分4秒と当時の4WDセダン最速タイムを刻み、最高速度も253km/hに達して歴代エボ最高速に仕上げられた。

 ルーフエンドにはボーテックスジェネレーターを装備させ、空力パーツのトレンドを生み出したことも注目に値した。

 次のチョイスはエボXだ。エボXにはツインクラッチのTC-SSTを初搭載。ローンチコントロールにサーキット専用のターマックモードを取り入れるなど時代を先取りしていた。変速操作はステアリングコラム固定式のパドルを採用。これはレーシングドライバーのキャリアとして強く採用を進言したものだ。

 ステアリングコラム固定式はフェラーリやマセラティ、ランボルギーニ、アストンマーチンなどのスーパースポーツモデルが採用する手法で、サーキット走行での操作性に際立っていた。エボXではアストンマーティンが採用していたマグネシウム製の軽量金属製を採用。操作フィールも質感の高いものだったのだ。

 また、車体スタイリングのデザインは歴代エボで最高に格好よく、登場から10年以上経過した現在でも見劣りしない。エボXではマフラーの排気口がデュアルで左右に分割され、またバッテリーをトランクルームに設置して前後重配分を向上させるなどハンドリングも極めていた。

 しかし、じつのところこのエボXよりも優れたハンドリングを示すモデルもあった。それはエボ・ワゴンだ。エボVIIのGTをベースにワゴンボディを架装したことで前後重量配分が最適化され、世界最速のワゴンを謳っていた。

 実際、スーパー耐久で走らせて好成績を収めたのだ。GTは機械式デフを搭載するモデルとしてラインアップされていたが、ワゴンをGTベースにしたのはAYCを装備したらセダンを凌ぐ激速モデルになってしまうと危惧したことも一因だ。エボXの前後重量配分はエボ・ワゴンの数値を目指したものだった。

 ほかにも初めてACDを初搭載したエボVIIもエボ存続に大きな影響を与え、低価格設定で累計販売台数ではエボシリーズ最高の販売台数を記録し、エボVIII開発への勢いを作ったのだ。

 僕とエボの成績として、N1耐久シリーズからスーパー耐久シリーズのレースでシリーズ制覇5回、50勝(総合優勝1回)を記録したが、エボだけで語ればその数はさらに多い。

 エボが活躍した時代。あの情熱と勢い、向上心がラリーアートの復活とともにこれからの三菱自動車へいま一度蘇ることに期待を寄せたい。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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