映画で憧れても現実は難しい!? 空き缶をガラガラ鳴らす「ブライダルカー」を日本で見かけないワケ (2/2ページ)

道路交通法に抵触する可能性も

 2つ目の理由は、日本では和服で挙式をするカップルも多いので、白無垢など晴れの日にふさわしい着物を着たまま、クルマに乗るのがなかなか難しいということがあります。結った頭はかなり身長より高くなっていますし、髪飾りも大きなものがあるので天井が低いクルマでは乗りにくかったり、男性の方も草履を履いたまま運転するのはNGだったりと、いろんな制約があるためにブライダルカーで出発するのは難しいのではないでしょうか。

 3つ目の理由は、敷地の広い結婚式場内での移動などで空き缶をぶら下げて走るのはまったく問題がないですが、公道を走るとなるとそれは別の話。道路交通法に抵触するかもしれない、グレーゾーンになると思われるポイントがいくつかあります。まず飾り付けですが、花やリボンなどがしっかり取れないようについていないと、もし走りながら道路にポロポロと撒き散らしてしまうようでは周囲のドライバーに迷惑をかけてしまいます。

 またぶら下げる空き缶ですが、クルマの積載物が車両からはみ出してもよい長さというのが道路交通法で決められています。それより長くなってしまうと、取り締まりの対象となる可能性もあるわけです。さらに、空き缶が鳴らす音の問題も気になります。道路交通法第70条「安全運転の義務」では、「運転に際しては、道路状況・交通状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度・方法で運転しなければならない。」とされていますので、騒音に対する具体的な規約がなくても、その音のせいで周囲のクルマが危険に晒されたり、事故の原因になったりすれば違反となる可能性があるということ。これらの理由を踏まえると、あまり積極的に空き缶を鳴らして走りたいとは思わないですよね。

 ただ、その代わりに日本では結婚式場やブライダルプランナーなどが素敵なブライダルカーのプランを用意していたり、自分の愛車を使って結婚式の演出をしてくれるサービスなどもたくさんあるようです。

 たとえば和装の結婚式の場合には、花嫁タクシーと呼ばれるブライダルカーでの送迎が人気。後席のドアは屋根まで開くようになっているので、きれいに結った頭での乗り降りもスムース。専門の運転手さんがついてくれて、花嫁にとって「出戻り」を連想させるので縁起のよくない「後戻り」=「バックギヤに入れる」ことを絶対にしないなど、晴れの日にふさわしい気遣いが徹底しているとのこと。

 またちょっとゴージャスな演出がしたいカップルには、ハリウッドスターのようなリムジンでの送迎や、オープンカーで颯爽と走るプラン、クラシックカーで映画のような送迎をしてくれるプランなどもあります。もちろん、自分の愛車を飾り付けて披露宴会場に飾ったり、ボディカラーを式場全体のテーマカラーとして演出してくれるなど、クルマ好きならではの結婚式はアイディア次第でいろいろと楽しめそうです。

 一生一度(ではない人もいますが)、人生の伴侶となる相手だけでなく、とびきりのクルマや愛車で門出を祝うというのは、素晴らしい思い出になることでしょう。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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