【試乗】「マイルドでしょ?」なんてナメちゃいかん! ボルボV60のマイルドハイブリッドが2023年モデルでもの凄い進化を遂げていた (2/2ページ)

ボルボのMHEVの走りの完成度はかなり高い

 時代遅れのオヤジはこのV60 B4で700kmほど走ってきた計算なのだが、印象をひと言で申し上げるならMHEVで十分! である。この次に同じパワートレインを積むXC60のほうのリチャージ、つまりプラグインハイブリッド(以下PHEV)にも試乗をしているのだが、もちろんPHEVモデルにも好印象を持った。それもかなり強く。だけどパフォーマンスや乗り味の点でいうなら、MHEVモデルもたっぷりと魅力的だったのだ。

 B4の現行モデル最大のトピックは、パワートレインの変更といえる。ボア×ストローク=82.0×93.2mm、1968ccの排気量のままわざわざミラーサイクル化と可変バルブタイミング機構の導入を行い、ピストンやインテークマニフォールドの設計を変更し、圧縮比を10.5対1から12.2へ高め、回転数に合わせて流速を調整するバリアブルノズルタービンを採用し、オイルポンプも新しくし、と改良はかなり大掛かりだ。

 組み合わせられるトランスミッションもトルコン式の8速ATから7速DCTへと変更された。スターターと発電機の役割を担う48Vのインテグレーテッドスタータージェネレーターモジュール(以下ISGM)のMHEVシステムも併せ持つ。それらの相乗効果で、燃費がWLTCモードで15.4km/Lと2.6km/Lも向上している。これは大きい。バッテリーEV(以下BEV)専門メーカーになることを前提としながら、これまでのモノにもしっかりと改良を加えて進化させるあたりにボルボのまじめさと誠実さが表れているようで、うれしさを感じる。

 話があやうく横道にそれるところだったが、この新たなパワーユニットの採用とときを同じくして、XC60などには残っている250馬力/350NmのB5ユニットはラインアップから外れることになった。B4の最高出力は197馬力/4750-5250rpm、最大トルクは300Nm/1500-4500rpm。そして、ISGMは13.6馬力に40Nm。もしかしたらやや物足りなさを感じるかと予想をしていたのだけど、それはまったくなかった。ISGMが発進の段階でどれだけ貢献してるのかはちょっと体感しにくいのだが、チョンとアクセルペダルを軽く踏んだだけで1.7トンを越える車体をスイッと引っ張り、そのまま綺麗に滑らかな加速へとつなげてくれるのだから、間違いなく効いているのだろう。

 “内燃エンジン”感がPHEVモデルよりも遙かに強く、僕はそこもちょっと気に入ってるのだけど、DCTがシフトアップをしていくたびに感じられる滑らかさと厚みのあるシームレスな加速が何より素晴らしい。パワーが盛り上がっていく感覚もあればレスポンスも良好、全域にわたって力不足などまったく感じることのない走りっぷり。同じV60のリチャージが350馬力であることを考えると、数値の上では見劣りがするけれど、ゆっくり流して走っていてもちょっとやそっと飛ばしてみても、不満に感じる場面はまったくなかった。

 リチャージよりも340kg軽いことがいい影響を与えてることは間違いない。V60は上陸直後に初めて走らせたときから「尖ってるわけじゃないけどフットワークはスポーティで気持ちいい」と感じていたもんだけど、この軽やかさはいいな、とあらためて感じる。バッテリーをたくさん積むPHEVも気持ちよく曲がってくれるが、ここはMHEVの方が1枚も2枚も上手。軽やかだけど軽々しくはなくて、ステアリング操作に対してスイッと素直に爽快に向きを変えてくれるから、気分が上がって御機嫌になる。デビューから4年が経過してシャシーの熟成も進み、乗り心地もさらにしなやかさを増して、かなり快適だ。

 MHEVと聞いただけで大したことないと思いがちな人もいるし、BEVと較べたら最先端にいる感じがしないのも確かだけど、V60 B4の完成度は相当に高いと思う。文句のつけどころが見つけられないのだ。軽く200万円以上も安価であることを考えたら、なおのこと。

 ボルボは近い将来の100%BEV化を目指しているわけだが、自動車のパワートレイン問題がこの先どんなふうにどこへと向かうのかは、まだ混沌としていてわからない。僕はBEVも嫌いじゃないし、PHEVだって嫌いじゃないが、内燃エンジンの可能性というものをこの先ももっと追求していくべきなんじゃないか? と強く思うのだ。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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