いまや軽やEVにまで付いてるパドルシフト! レーシングドライバーが「本当に必要か」を考えた (2/2ページ)

必ずしも速く走れるようになるとは限らない

 市販車の場合は、シーケンシャルトランスミッションではなくDCT(デュアルクラッチトランスミッション)の登場によりパドルが普及したといえる。また、パドル化によりCVTやATのマニュアル変速モードでもパドルを活用でき、さらに電動モデルの場合は回生強度の変更によるエンジンブレーキ効果をパドルで調整するケースもでてきた。

 レーシングカーは仕組みの如何にかかわらずフルオートマチックトランスミッションが禁止され、ドライバーは最低限パドルによるシフト操作が求められるが、それでもHパターンの時代を知る者にとっては、天国と地獄ほどの差を感じるのだ。

 一般車の場合はフルオートマチック化が可能なので、パドル付モデルはほとんどDレンジを備えている。つまり、パドルを操作しなくても走行可能なのだが、エンジンブレーキを強めたいとか、スポーティフィールを味わいたいとかいった場面でパドルが活用されている。

 ちなみにDCTのスポーツモデルでサーキット走行する場合は、パドルを使用して好みのギヤを選択して走るよりDレンジのフルオートマチックで走ったほうが速い。これはDCTの場合、機構的にプリセレクト機能が備わっており、その作動のために油圧を高く維持しておく必要があってパワー損失が大きいからだ。それは10〜15%程度に及び、加速を鈍らせている。ランエボXや日産GT-R、メルセデスAMG、ポルシェなど、DCTモデルはすべてDレンジのほうが速いラップタイムを刻める。

 一方で、シングルクラッチをオート化したモデルやDレンジのキャリブレーションが最適化されていないモデルではマニュアルモードのほうが速い。

 CVTやトルコンATなどの普通車では、パドルを操作する意味はほとんどないといってもいいだろう。こうしたモデルでは、ただスポーツフィールを演出しているに過ぎず、無駄な装備といわれても仕方がないようなクルマも少なからず存在している。

 こうした特性を理解した上で、パドル仕様の選択、活用を考えてみて欲しい。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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